おとなも子どももグリット(やり抜く力)が身につく4つのルール

 わが家には「ハードなことに挑戦する」というルールがあり、3つの条件がある。

1.家族全員(パパもママも)、ひとつはハードなことに挑戦しなければならない。

「ハードなこと」というのは、日常的に「意図的な練習」を要することだ。

 私は「心理学の研究はもちろん、ヨガにもがんばって取り組む」と家族に宣言した。夫は「不動産開発業でますます実績を上げる。ランニングもがんばる」と宣言した。長女のアマンダは「ピアノの練習」を選んだ(アマンダはバレエを何年も続けたが、とうとうやめたのだ。ルーシーもバレエをやめた)。

2.やめてもよい。

 ただしやめるには条件があり、シーズンが終わるまで、たとえば授業料をすでに支払った期間が終わるなど、区切りのよい時期がくるまではやめてはならない。始めたことは最後までやり通すべきであり、最低でもある程度の期間は、一生懸命に取り組む必要がある。

 言い換えれば、きょう先生に怒鳴られたから、競争で負けたから、明日は朝練があって寝坊できないのがつらいから、などという理由でやめてはならない。嫌なことがあっても、すぐにやめるのは許されない。

3.「ハードなこと」は自分で選ぶ。

 選ぶのを他人任せにしない。自分が少しも興味を持っていないのに、ハードなことに取り組んでも意味がないからだ。わが家では娘たちにバレエを習わせたとき、世の中にはほかにもさまざまな習いごとがあることを説明し、よく話し合ったうえで決めた。

 じつは、次女のルーシーの場合、「ハードなこと」がこれまでに5回以上も変わっている。いつも最初の意気込みはすごいのだが、そのうち「やっぱりこれじゃない」と思うことの繰り返しで、バレエ、体操、陸上、手芸、ピアノを習ったあと、ついにヴィオラに落ち着いた。ヴィオラを始めて3年になるが、興味はなくなるどころか、ますます大きくなるいっぽうだ。

 昨年は、学校のオーケストラと市のオーケストラに入部した。先日、「そろそろハードなことをほかの目標に変えたいんじゃない?」と訊いたら、ルーシーはあきれ顔で私を見つめ返した。

 アマンダは来年、ルーシーは再来年、高校生になる。高校生になった時点で、わが家のルールには4つめの条件が加わる。

4.新しいことでも、いまやっていること(ピアノやヴィオラ)でもかまわないが、最低でもひとつのことを2年間は続けなければならない。

 横暴だろうか?私はそうは思わない。このことについて、最近アマンダとルーシーが言ったことが、親の機嫌を取るためのウソやごますりではないならば、ふたりとも不満には思っていないはずだ。

 娘たちは「グリット」の強いおとなになりたいと思っている。そしてほかのスキルと同じように、「グリット」を身につけるには練習が必要なことも知っている。そして、そんな機会が与えられた自分たちがいかに幸運であるかも、よくわかっている。

 子どもが自分の道を自分で選ぶ能力を損なわずに「グリット」を育みたいと願う親御さんたちには、ぜひ「ハードなことに挑戦する」ルールをお勧めしたい。

(書籍『やり抜く力 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』より抜粋してきた本連載はこれで終了です。続きはぜひ書籍にてお楽しみください)