遊びの中で数字に強くなる
「10円玉トレーニング」

 そこで私は、

出てくる数は、この数より小さい数よ。計算途中で気がつかなかったほうが問題よ

 と、要領のいい答えの出し方を指導しました。

 そんなこともあって、私は毎日1~2時間、同学年の男の子を集めて、算数遊びをすることにしました。

 500枚の10円玉を早く数えるには、どの方法がいいか考えさせたり、ばらまいた10円玉の表と裏のそれぞれの数を数えさせたり、消しゴムを使わずにしっかりした数字を書かせるなど、遊びの中で数字に強くなるトレーニングをしたたのです。

 幼児のときならこんなに時間をかけなくても、感覚的に受け止めて成長させられたでしょう。

 でも、この男の子たちは、それまで知恵の輪、寄木細工、迷路、ジグソーパズルなどで遊んだ経験がなく、問題が複雑になると、すぐにお手上げになりました。

算用数字が、速く正確に書けるようになったことで、ようやく式を立てる時間が短くなり、ミスに気づくのが早くなって、自信がついたようです。

長じて大学では、みんな理科系で生物を専攻しました。

「概算」「およそ」
「約」の大切さ

 毎年、夏の終わりになると、「概算要求」が新聞、テレビで報道されるようになります。
 国の予算をつくるにあたり、各省庁が次年度使いたい金額の見積書を毎年8月末までに財務大臣に提出しないといけません。
 実際に使われる金額は国会で審議されて決まりますが、金額が「億」「兆」となるので、各省庁から「だいたいこのくらいという額」=「概算額」が出されるのです。
 年齢を重ねるにつれて、「約」や「概算」の額と、正確な額の両方がわからなければなりません

遊びながら数に強くなる<br />「10円玉トレーニング」久保田 競
(Kisou Kubota)
京都大学名誉教授、医学博士。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。1932年、大阪生まれ。著書に、『1歳からみるみる頭がよくなる51の方法』『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』(以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数

<競博士のひと言>

 およそ(約)の数を知るのは、前頭前野の働きです。
「コイン遊びトレーニング」は、それを知るためのものです。

 1個1個同じ重さのものをたくさん集め、うまく並べられるかを見て、並んだものの大小、金額、重さなど、およそ(約)の数を言わせ、それが正しいかどうかをチェックします。

 ここでは「10円玉トレーニング」を紹介しましたが、1円玉のアルミ硬貨は重さがちょうど1グラムなので、コイン遊びに最適です。

 こうして学んだことを、日常生活に利用します。
これから炊くお米は、カップで計らずに握った手の感覚でいうと何グラムか」などというように。

正確な「計算」とおよその「概算」は、どちらも大事です。

 親御さんも、お子さんと一緒に数に強くなりましょう。