「週刊ダイヤモンド」の最新号
特集「金融エリートの没落」

「個人営業」は金融業界で人工知能に取って代わられるか

 現在発売号の『週刊ダイヤモンド』(9月3日号)の特集は、「金融エリートの没落」という刺激的なタイトルだ。「没落」すると言われると心穏やかではない一方、今でもまだ「エリート」と呼ばれると、金融マンは少々嬉しいだろうから、よく読まれるのではないだろうか。上手いタイトル付けだ。

 さて、特集は多岐にわたるが、「没落」の構図を大まかに言うと、「マイナス金利政策」と「AI・フィンテック」の2つが大きなポイントだ。

 マイナス金利政策による金利低下では、金融機関にとって既に十分低かった調達金利の下がり方が小さいのに対して、長期金利や貸出金利の低下が大きく、利ざやが悪化しており、確かに苦しい経営環境になっている。特集では、銀行が経常赤字に転落するまでの「余命」を試算してランキング表にしているが、なかなか興味深い。確かに現在の環境が続いた場合に、「保たない」金融機関は出てくる可能性がある。

 特集にはそこまで書かれていないが、危ない銀行に大口の預金をお持ちの方は、「個人向け国債」(「変動10」をお勧めする)にでも、資産を移しておく方がいいだろう。

 また、特集の中で、地方銀行及び地銀マンのステイタス低下が取り上げられているが、現在の地方金融機関の姿は、大手行に掛かりっきりで手が回らなかった金融行政の「やり残し」の結果でもあり、状況は、この記事以上に苦しいような気がする。

 一部には、地銀は地元企業に密着して、本来お金を貸すべき先にお金を貸すような、いわば「半沢直樹」となって再生していくべきだ、という意見があるが、これは現実的ではない。部分的には、そうした成功事例も出て来ようが、大筋としてはそれをやりたくてもできない(チャンスと能力の両面で)現状があるのであって、根本原因を改善できる方法がない以上、将来性は厳しいと言わざるを得ない。