たった一言で「数億円」の経費を削減した<br />孫正義氏の「言葉力」とは?横田伊佐男(Isao Yokota)
CRMダイレクト株式会社代表取締役。東京都生まれ。横浜国立大学大学院博士課程前期経営学(MBA)修了。シティグループ、ベネッセグループにて、一貫してマーケティングに従事。約6000商品のプロモーション経験、大手企業100社超のコンサルティング経験を体系化し、2008年に独立。「使えなきゃ意味がない」を信条に、使えて成果につながる戦略立案を徹底的にたたき込む日本唯一のプロフェッショナル・マーケティングコーチ。企業や受講者の課題点をすばやく摘出し、短時間で確実な成果へと引き上げる「超訳力」を駆使したマーケティング研修講座は、上場企業ホールディングス、政府系金融機関、欧州トップの外資系金融企業、意欲ある中小企業経営者等からの依頼が絶えず、これまでの受講者はのべ2万人を数える。ダイレクトマーケティングフェア、CRMカンファレンスなど講演多数。著書に、『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社)、『一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか?』(学研パブリッシング)、『ケースブック 価値共創とマーケティング論』(分担執筆、同文舘出版)がある。2016年10月から横浜国立大学非常勤講師(国際マーケティング論)。横浜国立大学成長戦略研究センター研究員。

横田 そう言えば、2012年は僕もiPadを買ったばかりの頃でした。
 当時、孫さんのツイッターを見ていたら、
「これでノートというものがいらなくなるという確信を得た。ふふふ」
 というようなツイートがあった記憶があります。
 社内ではペーパーレスがそこまで徹底されていたのですね。

前田 ツイッターといえば、もうひとつ記憶に残っているのが、当時話題になった「やりましょう」ですね。
 これはツイッターのフォロワーから孫さんに寄せられた要望に対し、孫さんがその場で「やりましょう」と返事をして、会社として応えることを約束するというものです。

――社員としては、孫さんのツイートに戦々恐々ですね(笑)

前田 まさに(笑)。だけど、孫さんが「やる」と言った以上は、会社として応えるということ。
 そこには、社員としても意地がある。だから「どう実現するか」「いつまでに実現するか」をすぐに考えるのです。
 要望を投げかけたフォロワーにも、「やりましょうって言ったのに、いつまで放っておくんですか?」と思われてはいけないので、スピーディに提案して案件化して、動かしていかないといけない。
このスピード感を乗り越えていくのが毎日、大変でしたが、やりがいもありましたよ。

「社外プレゼン」と
「社内プレゼン」をどう使い分けるか?

横田 私も、孫さんのプレゼンで忘れられないことがあります。
 2015年3月期第2四半期決算説明会で、孫さんは冒頭、
「ソフトバンクは金の卵を産むガチョウである」
 というスライドをバンと見せてプレゼンをしましたよね。
 あれが鮮明に記憶に残っているんです。
 要は「ソフトバンクはいろいろな事業を生む母体である」という意味で、投資している事業への正当性をプレゼンするようなものだったのですが、プレゼンがそのまま謎解きのような、不思議な語り口だったんですよね。