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安東泰志の真・金融立国論

的を外れた新成長戦略の「新金融立国」論

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第2回】 2010年11月16日
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 「ヒト・モノ・カネ」と言うが、産業の発展にとって産業金融が果たす役割は極めて大きい。金融は、いわば産業の血流である。どんなに脳(研究開発)が活性化していても、身体(製造販売)が頑強でも、血流が止まれば人も産業も生きていけないのである。体内で血を作り送り出す諸臓器に該当するのが金融機能であるが、高度成長期以来、日本では一貫して銀行が強大な力を維持し、これを一手に担ってきた。いわゆる直接金融の道も広がってきてはいるが、産業界における活用は未だ部分的なものに過ぎず、PE(プライベート・エクイティ)ファンドなど欧米では産業金融の主役を張るプレイヤーも未成熟である。この産業金融を改善することが日本の成長のカギを握っていることは言を俟たない。その観点から、政府が去る6月18日、「『元気な日本』復活のシナリオ」として公表した「新成長戦略」を検証してみたい。

 新成長戦略は、以下の7つの戦略分野を定めている。
(1) グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略(2.5)
(2) ライフ・イノベーションによる健康大国戦略(2.5)
(3) アジア経済戦略(2.5)
(4) 観光立国・地域活性化戦略(6)
(5) 科学・技術・情報通信立国戦略(2.5)
(6) 雇用・人材戦略(4.5)
(7) 金融戦略(1)

 上記各項目の後ろのカッコ書きの数字は、それぞれの項目に割かれている紙数を数えたものだ。金融戦略に割かれた紙数は、他の分野に比べて極めて貧弱であることが読み取れる。実は、新成長戦略ペーパーの冒頭部分である「基本方針」においては、「内外の投資家やマーケットの信認確保」「金融・資本市場の健全な発展とリスクマネーの供給」を通し、「資金循環面から成長が制約されることのないよう最大限の努力を行う」との記載があるので、政府も産業金融の強化が成長戦略の重要な要素であることは認めているようである。

 すなわち、政府は、金融分野の強化が必要と考えながらも、具体策を打ち出しあぐねているというのが実態なのだ。事実、上記7つの戦略分野を具体化した「21の国家戦略プロジェクト」の中には、金融分野は僅か1つしか入っておらず、それも「総合的な取引所の創設の推進」という、産業金融の強化という本題からかなり視点がずれた政策になってしまっている。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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