与野党が提出していた育児・介護休業法改正案が、社会問題化している「育児切り」の防止策を含めた修正案協議での合意を経て、参院本会議で全会一致で可決、成立した。

 育児・介護休業法(以下「育休法」)は、育児・介護などによるワークスタイルの変化と、継続的雇用の両立を図るもの。少子高齢化時代における社会的ニーズや労働力確保のために重要な法案として位置づけられている。

 さて、今回の改正の主なポイントを挙げると以下のとおりになる。

(1)3歳以下の子どもがいる短時間勤務制度(残業免除制度含む)の義務化

(2)父親の育休制度取得の促進(父親・母親が共に育休制度を取得する場合の期間を現行の「子どもが1歳まで」から「1歳9ヵ月まで」に延長、父親の育休の再取得を可能にする、など)

(3)「育休切り」防止のための育休取得者に対しての書面交付の義務化、勧告に従わない事業者の名称公表

 今回の改正の特徴は、いずれの改正ポイントも、「企業の取り組み」の充実を促すものだと言える。特に、(1)の短時間勤務制度義務化などは、企業の人事労務に関わる人たちの中には「早急に取り組まなくてはならない課題がひとつ増えた」ことを意味する。

 そもそも、育休制度が実効を発揮するためには、「運用面」が重要であることは、周知の事実。今回の「短時間勤務制度義務化」といった改正は、企業の制度運用にまで一歩踏み込んだものと言え、その意味では一定の評価ができるだろう。

 その一方で、厳しさがまだまだ続く経済情勢の中、企業にのみ「負担」を強いることで本当に現状が好転するのか、という疑問もある。特に、中小企業においては、本音で言うなら、「そうは言われても……」というところではないだろうか。

 5月に厚生労働省が行った調査によると、従業員規模10人~29人の事業所における短時間勤務制度未導入の割合は、50%を超えている。その理由として「短時間勤務になじまない業務が多い」を挙げている企業が20.9%あることから推察されるのは、従業員数が多く、かつ、業務の分担などが定着・成熟していて「切り分け」やすい大企業に対し、中小企業は、業務が未分化であり、「切り分け」をするのはけっして容易でないということだ。こうした現状において短時間勤務制度を導入しても、有名無実なものに終わってしまう危険性が高いことは、十二分に予想される。

厚生労働省が5月に行った「今後の仕事と家庭と両立支援に関する調査結果」より。従業員調査によると、「望ましい働き方」として「短時間勤務」「残業のない働き方」は、もっとも高い支持を獲得している。

 導入の前段階として、業務の見直しや再構築が必須となるわけだが、それには、何らかのノウハウと、ある程度の時間的猶予が必要だ。さらに言うなら、「ノウハウ」も、「時間」も、多くの場合、「タダ」ではない。企業の努力を促すとともに、その努力を支援するための行政側の方策も必要ではないかと思われる。

(梅村 千恵)

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