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日産「リーフ」を迎え撃つ三菱自動車「アイミーブ」
電気自動車“営業トーク全国大会”の壮烈

週刊ダイヤモンド編集部
2010年11月18日
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 「いらっしゃいませ!」「後藤様大変お待たせしてしまい申し訳ございませんでした」「ご試乗はいかがでしょうか」。

 2010年11月16日、品川駅前のホールで、ある競技の全国大会が開かれていた。審査員、観客など100人以上が見守る中、舞台の上に立つのは三菱自動車の販売会社の社員だ。

「商談ロールプレイング全国大会」の競技中の模様。

 競技の内容は、劇団の役者が扮する後藤さんという40代の男性に対して電気自動車「アイミーブ」の商談を進めるというもの。これは今年で5回目になる「商談ロールプレイング全国大会」で、今回初めてアイミーブが対象車として選ばれた。

 この日、全国大会に参加したのは8人。全国にいる4000人の三菱自動車の営業マンのうち、まず店内の予選を、次に地区大会を勝ち抜いてきた。

 競技時間は一人15分で、自分の出番までは控え室にいて前の選手と役者の会話は聞こえない。舞台にはアイミーブがおかれ、机と椅子が設置されディーラー内の雰囲気を模してある。役者が扮する後藤さんは現在、軽自動車のワゴンに乗っていて、アイミーブに興味があるという設定だ。

 まずはアンケートを記入するところから始まるのだが、後藤さんはカワセミを撮影する趣味があり、最近、カワセミが減ったことを嘆いていたり、朝早くクルマで出発する際のエンジン音を気にしていたりする。

 電気自動車のアイミーブは走行時には二酸化炭素を一切排出しないし、エンジン音がないため非常に静かで、今の後藤さんにはぴったりだ。

 つまり、序盤の会話の中で営業マンが反応すべきヒントを数々提示しているのだ。その意を汲み取って、試乗してもらうところまで持って行くことが目標となっている。

 会話の内容や営業マンの商品知識などを10人の審査員が16項目を5段階にわたり評価する。

 後藤さんが会話のなかで提示するヒントへの選手の反応はそれぞれ違う。また、アイミーブのクルマの下には電池が積まれているのだが、それを後藤さんに確認させるために、座って車体の下を覗いてもらおうとする選手も複数いたが、その動作一つとっても、スマートな選手とそうではない選手がいた。

 競技の締めは最大の目標たる試乗だ。

表彰後、選手全員で記念撮影。

 電気自動車は前述のように非常に静かなうえに、モーターの特性上、発進時の加速が優れている。多くの人が実際にアイミーブや日産のリーフに試乗すると、静粛性と加速に驚く。それまでのネガティブなイメージが一瞬で吹っ飛ぶという人も多い。

 それだけに、三菱と日産の関係者は口を揃えて「電気自動車はとにかく乗ってもらうことが勝負」と言う。この日も、「乗ったら買わなければならないんじゃないの」と渋る後藤さんをなんとか試乗まで持って行こうと選手たちは奮闘していた。

 8人が競った結果、京田辺店の山本潤一さんが最優秀賞に、他の3人が優秀賞や敢闘賞を獲得した。

 ちなみに、このようにメーカーが主催して、販売会社の営業マンのセールス技術を競わせる大会は、トヨタや日産にはないという。

 三菱がアイミーブの営業強化に力を入れるのには理由がある。

 エコカー補助金が続いた9月までは、従来のガソリンエンジン車が販売の主力だったため、アイミーブの販売は後回しにされてきた。

 今までのガソリンエンジンのクルマとまったく違う長所と短所を持つ電気自動車の販売には、かなりの商品知識が必要になる。

 いくら三菱が満を持して発売した電気自動車とはいえ、ディーラー側にしてみれば、エコカー補助金があるうちに、売れるものを売っておきたい。自然と、アイミーブを売る技術を磨く時間は少なくなる。

 一方で、現在、電気自動車を購入しようとする層はかなり環境に対する知識が豊富で問題意識も高い。そんな思いで、三菱のディーラーを訪ねると、商品知識が乏しく、場合によっては熱意のない営業マンが対応する・・・。

 実は三菱自動車本体にも「お客様から電話で、せっかくディーラーにアイミーブの話を聞きに行ったのに、熱意がなくてがっかりしたという声をいくつか頂いた」(三菱自動車幹部)という。

 この日、最優秀だった山本さんも受賞のコメントで、これまではアイミーブの販売に対して「逃げている部分もあった」と明かしている。

 しかし、12月に最大のライバルである日産の電気自動車「リーフ」が発売される。価格帯が同じなため激戦が予想され、アイミーブの営業強化は必須になる。

 また、業容拡大を狙うヤマダ電機やビックカメラが電気自動車の販売に乗り出そうとしている。まったく新しいクルマだけに今後、家電量販店以外でも、例えば太陽光発電パネルと相性がいい住宅展示場など、これまでにないチャネルで販売される可能性もある。従来の三菱のディーラー側としてもここで営業力を強化して存在感を増しておいて損はない。

 今まではアイミーブの販売から逃げていたという山本さんだが、このロールプレイング大会への参加をきっかけに商品知識が増し、なにより自身がアイミーブに魅力を感じるようになったという。そして、全国大会の3日前に、初めてアイミーブの販売に成功した。

 一方の日産自動車も現在、全国のディーラーの営業マンに次々とリーフに試乗をさせ、準備を進めているという。

 12月から始める電気自動車の販売合戦。各社の営業マンの腕にも要注目である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)

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