市町村合併の協議で多くの自治体が調整に手間取った案件のひとつが、都市計画税についてである。都市計画税は市街化区域内の土地や建物に課税するもので、公園や下水道整備などに使われる目的税である。自治体側に徴収するか否かの裁量が認められており、課税標準額に対する税率(0.3%を上限)も自治体が条例で定める。つまり、都市計画税は全国一律課税ではなく、自治体によって様々となっている。

 たとえば、市街化区域と市街化調整区域の線引きがされておらず、都市計画税の課税対象そのものが存在しない自治体もあれば、線引きありで市街化区域をもちながら課税していない自治体も少なくない。また、税率を上限(0.3%)に設定して目いっぱい徴収する自治体もあれば、0.2%や0.1%に軽減しているところもある(固定資産税の標準税率は1.4%なので、都市計画税はその5分の1程度といえる)。

 合併協議で問題になったのは、自治体間で異なる都市計画税の統一についてである。当然のことながら、違いが多ければ多いほど、ややこしさも増大する。こんな事例がある。

 三重県津市の住民グループが今年10月、市長に都市計画税の廃止を求める署名を提出した。集められた署名は約1万8千人分で、住民グループは市議会にも請願を提出する予定という。

 津市は06年1月、隣接する久居市や河芸町、芸農町など9市町村と合併した。10市町村の大同団結によってできた新・津市は人口約28万、琵琶湖を上回る市域を誇る巨大都市となった。しかし、合同結婚とあって産みの苦しみも半端なものではなかった。調整すべき事案がたくさんあり、しかも、協議に加わる当事者も多い。あちらを立てれば、こちらが難色を示すといった場面が相次ぎ、協議は迷走を続けた。合併期日が予定より1年遅れるなど想定外の大難産となった。

 難航した要因のひとつが、都市計画税の違いだった。10の市町村は4つのパターンにわかれていた。

 ひとつは、旧津市。都市計画税0.3%を課税していた。もうひとつは、旧久居市と旧河芸町、旧香良洲町の旧3市町だ。これらは市街化区域への都市計画税を課税していなかったグループだ。さらに、都市計画区域を設定しているが線引きなしというのが、旧安農町と旧芸農町の旧2町。最後のグループは、都市計画そのものをもたなかった旧4町村。旧一志町と旧白山町、旧美里村、旧美杉村である。