最近、育児に積極的な男性たちが「イクメン」ともてはやされる機会が多くなってきた。メディアの反応もおおむね好意的で、厚生労働省も「イクメンの星」を毎月選定するなど、男性による子育ての啓発に力を入れている。女性の社会進出が進み、「男性は育児をしなくてもよい」という旧来型の考え方は、もう通用しなくなった。しかし実際には、育児休業を取得した経験がある男性はわずか1.72%に過ぎない。男性が育児に参加する風潮が十分に浸透しているとは、言い難い状況だ。社会的にニーズが高まる一方、周囲の理解が深まっているとは言えない男性の育休取得。調べてみると、誤解と偏見の壁に苦悩しているイクメンたちの現状が明らかになってきた。(取材・文/宮崎智之、協力/プレスラボ)

「イクメンブーム」が盛り上がる一方、
“子育てプア”の男性が増える矛盾

「子ども? 大好きですよ。土曜、日曜は必ず一日中、一緒にいて面倒をみるようにしています」

 こう話すのは、都内に住む男性Aさん(30代、電気機器輸入会社勤務)。4歳と0歳の息子を持ち、自らを「イクメン」と称するほどの子ども好きだ。しかし、そんなAさんも育児休業の話になると顔を曇らす。

「まったく取れるような雰囲気ではありませんよ。前例もありませんし」

 Aさんの帰宅は、毎日午後9時~10時頃になる。すでに子どもは寝てしまっていて、寝顔を見るのが精一杯という状況だ。「休日以外は妻に任せっきりというのが実情です。もっと育児に参加したいと思っているのですが……」と話すが、育休については「そもそも、就業規則に規定自体がありませんから」と肩を落とす。

 現在巷では、「育児に参加する男性はカッコイイ!」という意識が盛り上がりつつある。この“イクメン”ブームに拍車をかけたのが、全国の男性首長が次々に育児休業の取得を表明し始めたことだ。