毎年のようにスーパー台風が上陸し、ゲリラ豪雨に見舞われ、地震リスクと向き合っている災害列島ニッポン。日本の亜熱帯化が加速すると、列島を取り巻く環境は激変する。殺人蚊が襲来し、農業が大打撃を受ける一方、熱中症などの死亡リスクは3.7倍、河川の氾濫リスクは10倍超に急上昇する。(「週刊ダイヤモンド」2015年12月5日号特集「暴れる地球」より)

【被害者 72.5万人】
殺人蚊・蜂

感染症まん延させる
最凶の刺客が襲来し列島はパニック!?

 温暖化で日本の亜熱帯化が進めば、最凶の殺人生物が日本に襲来することになる──。

 米ゲイツ財団によると、その生物は毎年世界で72万5000人もの人間を死に至らしめるという。その正体は、体長5ミリメートルにも満たない蚊。小さいからと侮るなかれ。蚊は人間にとって致命的な感染症を運んでくるくせ者だ。

 感染症の代表例が2014年に東京でもパニックを引き起こしたデング熱。重症化すれば死に至る。媒介するのはネッタイシマカやヒトスジシマカ。ヒトスジシマカは白黒のしま模様を持ち、日本では“やぶ蚊”と呼ばれるどこにでもいる蚊だ。ネッタイシマカは日本に生息していないが、成田空港や羽田空港周辺で確認されており、亜熱帯化が進めば、定着は時間の問題だ。

 15年はデング熱の国内感染例はないが、むしろまん延リスクは高まっているといえるだろう。訪日外国人が激増しているからだ。

 14年まで国別訪日客数トップで、15年も9月までで277万人もの訪日客を送り出す台湾で、今年デング熱が大流行。現地では死亡例が141件出ているのだ。

 温暖化でヒトスジシマカの生息域の北限は年々北上している。フマキラーの佐藤猛マーケティング部長が「殺虫剤市場が倍増する可能性がある」と話すように、日本でも今後、東南アジア並みに一年中蚊が活動する可能性もある。

 怖いのはデング熱だけではない。西ナイル熱も毎年のように死亡例が出る感染症で、13年に北米で6000人強の感染者が出ている。媒介する蚊の種類が60種類以上に上るため、専門家の間ではデング熱よりも恐れられている。一度日本に入り込めば、デング熱のまん延スピードとは比べものにならないくらいの速さで広がり、パニックに陥る危険性が高い。

 このまま温暖化が進めば蚊が媒介する最悪の感染症、マラリアの侵入も現実味を帯びる。13年、世界のマラリア患者数は約2億人で、推定で58万4000人もの人が死亡した。主に、アフリカや東南アジアの奥地などで感染拡大が問題となっているが、日本も人ごとではなくなる可能性は十分にある。