アウンサンスーチー氏も、母親のおかげで頑張れた

竹中 そういえば、3年前にバンコクで開催されたアジア・ダボス会議において、アウンサンスーチーさんが20年ぶりに国際会議の場でスピーチをされたんです。その後に行われた質疑応答で、「あなたはなぜそんなにがんばれるんですか?」という質問に対して彼女は「母親のおかげです」と答えていました。でも、彼女のご両親で有名なのは、ミャンマー(ビルマ)建国の父であるアウンサン将軍でしょう?

竹中平蔵式教育法の原点:学問と社会を紐づけ、基本を徹底的に問うハーバード大学

ムーギー 父親の影響が強そうに思いますが、そうじゃなかったと?

竹中 彼女のお母さんはもともと看護師ですが、夫であるアウンサン将軍の暗殺後、インドとネパールの特命全権大使に着任します。子どもたちへの教育にも相当力を入れていたようですね。

 母親のがんばって働く姿、未亡人になってもくじけない姿、自らに教育を施してくれた姿を近くで見続けることで、スーチー女史は強い影響を受けたのでしょう。

ムーギー 「がんばる力」を身につけられた人は、強いですよね。

高校で出会ったすばらしい師:
「世の中の基礎」をよくすることが大切だと学んだ高校時代

竹中 私の場合、高校の倫理社会の先生からもいい影響を受けました。田舎の県立高校には、ただ「君は成績優秀だから東大に行きなさい」と言う先生が多いものです。でも、その先生は「まずは社会のことを学びなさい」など、「学問とはなんたるか」を語ってくれた。そうそう、宿直しているその先生のところにライバルと二人でコーラとおかきを持って、「大学ってどういうところなんですか?」と聞きに行ったりしてね。

ムーギー お酒とおつまみじゃないところが可愛いですね。

竹中 高校生らしいでしょう。「いったい僕はなにを学べばいいんですか?」と聞くと、「それはわからない、自分で考えないとね。そのためにはこんな本を読むといいよ」と教えてくれたり……。

ムーギー へええ、すばらしい先生ですね。「自分で考え、決めさせる」という基本方針は持ちつつも、「どの本を読めばいいか」とサポートしてくれている点が、『一流の育て方』に登場する多くの偉大な親・先生の教育方針と共通しています。

竹中 それで、世の中をよくするためにはどうすればいいのか聞くと、「基礎が大事だね」と答えてくれました。では、基礎とはなにかと問うと、「法律や経済だ」。……それで私は、経済学部を志したんです。