定期健診で高血圧と動脈硬化が指摘されている、ちょいメタボのSさん(55歳)。薬も飲んでいるのだが、この春の健診でトリプルAが見つかってしまった──。

 医者からトリプルAを言い渡されたら要注意。決してムーディーズの最上級格付けではない。トリプルA(AAA)はすなわちAbdominal Aortic Aneurysm、腹部大動脈瘤の略なのだ。

 腹部大動脈瘤は、動脈の直径が部分的に通常の1.5倍以上の3~5センチメートルに拡張した状態を指す。細長いチューブの1ヵ所だけが風船のようにふくれた状態をイメージするとわかりやすい。約90%は左右の腎臓に枝分かれしている動脈の下流に発生する。動脈硬化が主要因なので、50歳を過ぎてから男女共に直線的に増加するが、男性の発症頻度が5倍ほど高い。また、両親のいずれかがAAAである場合、本人がAAAを発症する確率は15~25%と、遺伝的要因も影響すると考えられている。

 AAAは破裂するまで自覚症状がほとんどない。このため、ほかの病気で受診した先のCTや腹部エコーで偶然に発見されることが多い。破裂したときの症状は、急激な腹痛と背中の痛みだ。脇腹や足の付け根に痛みが走ることもある。破裂後は一過性に血圧が下がり、数時間かけて出血性ショックに陥る。破裂から緊急手術までの時間が生命を決するが、手術までたどり着ける人は2人に1人。運よく手術を受けられたとしても術後30~50%が死亡する。