後継者がいない企業が増える?
“引退間近”の中小企業経営者が抱える悩み

 現在、日本の人口構成比の中で最も高い比率を占める「団塊の世代」。

「団塊の世代」は、一般的に第二次世界大戦後のベビーブームに生まれた世代と定義され、現在60歳~65歳くらいの方々を指す。戦後日本の成長を支えてきた世代であり、その人口の多さから、様々な形で日本社会に大きな影響を及ぼしてきた。

 団塊世代が一斉に定年を迎えた数年前、「定年にともなう、退職金の増加が企業経営に影響を与える」、あるいは、「技術の継承がうまくいくのか」などといった問題を多くのマスコミも報じていた。しかし最近では、そうした報道も見られなくなった。

 この世代の方々は、日本がまだ経済成長していた1980年に30代前半、バブル期に40代前半だった。そうした時期に社会人として一番油の乗った年齢だったこともあり、起業している方が多い。そして、企業規模の違いはあれど、それなりに成功を収めている。

 あれから数十年。

 団塊世代創業者がいま、後継者に会社経営のバトンを渡そうとしている。精力的に仕事をしてきた彼らが、一般企業に勤める人々よりも少し遅れて「自らに定年を言い渡そう」とする時期にさしかかってきた。 

 上場企業クラスならば、優秀でリーダーシップのある社員に後を託せばいいのだが、中小企業の場合(創業者は銀行からの融資に個人保証をつけていることも関係するのだろうが)、自分の息子を後継者にすることがほとんどだ。

 しかし、このバトンタッチがうまくいっていないケースも実は少なくない。

 都市部の一流大学に進学し、有名企業に就職している息子などからは、「おやじの会社を継ぐのはなあ…」という声が聞こえてくる。また、産業のライフサイクルを考えると、創業時は時流に乗った産業であっても、今では衰退期(あるいは横ばい期)にさしかかっている。したがって、今後の企業成長のためには大掛かりな改革(業態の転換など)の必要があり、会社の舵取りが困難であることが予想される。ひどい場合は、大きな負債を抱え、今後の会社運営が厳しいこともある。 このような場合、創業者は「息子に継がせるのは…」と考えるうえ、息子も「オレが継いでもうまくいかないよ」という思考になっている可能性が高い。