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吉田恒のデータが語る為替の法則

国債買い入れ決定と米金利上昇は矛盾?
しかし、前回も動きは同じだった!

吉田 恒
【第107回】 2010年11月25日
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 11月に入ってからの為替相場の値動きは、予想どおり、それまでの「米ドル安」から「米ドル高」へと転換したかたちになっています。このリード役の1つが米国の金利上昇でした。

 ところで、この米国の金利の動きは、来年にかけて90円以上の米ドル一段高をもたらす可能性を秘めている一方で、目先的には、逆に「米ドル高シナリオの落とし穴」になる可能性も秘めていることを、みなさんはご存知でしたか?

国債買い入れ決定にもかかわらず、米金利は上昇した

 約半年間続いてきた「米ドル安・円高」から「米ドル高」へ転換するとしたら、そのきっかけは何になるのか?

 私が考えたのは米国の金利上昇でした。

 「資料1」は、このコラムでもよく使う米ドル/円と米国の長期金利(10年もの国債の金利)のグラフを重ねたものですが、両者の相関性が高いことがわかります。

 その意味では、「米ドル高」となるかどうかについては、米国の金利が上昇するかが手がかりとなります。

 そんな中で、予想どおり、米国金利の上昇が広がるのを追いかけるように、11月に入ってから米ドルが上昇してきたことがわかるでしょう。

資料1

 それでは、なぜ11月に入ってから、米国の金利は上昇が加速したのでしょうか?

 11月初めに行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、FRB(米連邦準備制度理事会)による米国債の購入が決まったわけですが、それにもかかわらず、決定直後から米国債価格は下落し、その利回り、すなわち、長期金利は急上昇しました。

前回の国債購入決定時も、米金利は上昇していた

 このように、FOMCの決定と米国の金利上昇は矛盾するようですが、しかし、この矛盾した動きは、FOMCが前回同じように米国債購入を決定したときにも起こっていました。

 「資料2」は、FOMCで前回、米国債購入が決定した2009年3月18日からの米国の長期金利の動きと、今回、FOMCで米国債購入が決められた11月3日からの動きを重ねたものです。

 これを見ると、ともに米国債買い入れが決まった後から、むしろ、金利が上昇(債券価格は下落)に向かっていたことがわかるでしょう。

資料2

 つまり、FOMCで米国債購入が決定した後は、米国の金利が上昇するほうが過去の経験どおりであって、その経験どおりの米国金利上昇が米ドルを引っ張り上げる結果になっているとも言えそうなのです。

 ちなみに、FOMCにおける米国債買い入れ決定後の米国金利上昇は、前回は約3カ月間続き、その中で、米国の長期金利は4%近くまで上昇しました。

 今回も同じような展開になるならば、米国の長期金利は来年2月にかけて4%近くまで上昇するといったシナリオになります。

米金利の「類似相場」はもう少し続きそうだが…

 さて、前述のように、米国の長期金利と米ドルは相関性が高いということでした。

 したがって、来年2月にかけて米国の長期金利が本当に4%近くまで上昇するならば、米ドルはつれて90円を大きく超えて、95円近くまで戻るという話になってきます。

 しかし、このシナリオには、私は今のところ否定的です。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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