予兆はあった。旅行はもちろん、長距離の移動を伴うビジネス出張が激減している。JR各社の2021年3月期決算は全社赤字となり、コストカットに励む寂しいニュースばかりが目立つ。回数券の販売終了もその一つだ。

 JR東日本が回数券廃止を発表したのは、昨年11月のこと。東北・山形・秋田などの新幹線回数券は、2021年6月30日で販売を終える(利用できるのは10月10日まで)。

 さらに、ドル箱路線・東海道新幹線の回数券まで廃止になる。JR東海は、2022年3月31日で首都圏~名古屋・京都・新大阪など16区間で新幹線回数券の販売を終えるという。すでに2021年3月末には東京~静岡、浜松、小倉などの区間で終了してはいたが、まさか1年後には人気路線までなくなってしまうとは。これは金券ショップの存続にかかわる決定といっていい。

コロナ禍に翻弄される回数券価格の激変ぶり

 新幹線回数券は片道運賃と特急券が1枚になった6枚つづりの回数券で、正規料金よりも安く利用できるため出張族に人気がある。

 指定席で使うには購入後に座席指定が必要だが、いったん指定した後でも列車を変更することができ、使い勝手がいい。使用期間は3カ月間(大型連休やお盆、年末年始など利用できない時期あり)で、金券ショップではこれを1枚単位でバラ売りしてきた。東海道新幹線回数券の場合、正規で買えば1枚当たり(つまり片道料金)は、東京・品川~名古屋1万550円、東京・品川~新大阪1万3940円だが、この金額より安く買えるのが金券ショップというわけだ。

 ただしその値段は、ショップによってまちまちだ。仕入れ値、店の立地や競合店の有無、在庫によっても違う。特に競争が激しいのは、東京なら同じ一角にショップが林立するJR新橋および新宿西口エリアだろう。10円でも、いや5円でも他店より安くないと客は他店に行ってしまうからだ。

 価格の変動要因は、それだけではない。

 同じ回数券でも欲しい人が多ければ値は上がり、誰も買わなければ安くなる。まさに需要と供給の原理を地で行く世界だ。それが如実に分かる価格データを紹介しよう。