日本の自殺者数は一時期のピークより減ったものの、先進7ヵ国の若年世代ではいまだに死因第1位を占め、深刻な事態を抜け出してはいない。自殺の多くは、うつ病などの「ココロの病」が原因と見られており、自殺予防対策には「ココロの病」の治療が欠かせない。最近、米国では、薬物治療中心の西洋医学だけでなく、鍼灸などの東洋医学も組み合わせた治療が注目され、特に日本独自の「痛くない鍼灸」への関心が高いという。その現状をレポートする。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

いまだ深刻な事態を示す
日本の自殺者の統計

米で注目のうつ・自殺対策、日本独自の「無痛鍼灸」とは代表的な東洋医学の鍼灸(写真はイメージです)

 日本の自殺者数は6年連続で減少し、昨年は、1998年に自殺者が3万人以上に急増する前の97年(2万4391人)の水準まで減った。

 だが先進7ヵ国における日本の自殺率の高さは依然突出しており、なかでも若年世代(15歳~39歳)の死因第1位が自殺というのは日本だけの特徴だ。

 日本財団が実施した、20歳以上の男女4万人を対象にした初めての大規模な調査では、「過去に本気で自殺したいと思ったことがある」という人が、4人に1人に上るという衝撃的な事実が明らかにされた。

 自殺をめぐる状況は、相変わらず深刻だ。

 自殺の原因・動機はうつ病や身体の病気など「健康問題」が最も多く、次いで「経済・生活問題」、「家庭問題」、「勤務問題」の順となっている。

 ただ2015年の統計では、「健康問題」が前年より6%減少したことが全体の数字引き下げに繋がった。内閣府の担当者は「うつ病への理解が広がり、対策が進んだ効果」と推察している。

 自殺を選ぶ人は総じて心理的に追い詰められ、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症しているケースが多い。「経済問題」など、他の原因・動機にカウントされた人たちの中にも、うつ病を発症していた人はいたはず。

 つまり、うつ病患者や予備軍を早期に発見し、治療することができれば、自殺者はさらに減らせるのではないだろうか。

 そこで近年、注目されているのが、「痛くない鍼灸」による心のケアだ。