顔写真を中心に人事情報を管理するという独特のアプローチを取っているのが「カオナビ」である。システムを立ち上げると社員の顔が並び、さまざまな条件で検索して人事関連の情報を見ることができ、一定の条件とひも付けて並び替えることもできる。その狙いはどこにあり、人事評価にどのような効果が望めるのか。

柳橋仁機
カオナビ
代表取締役

「人事評価は人材マネジメントの一部。給与額を決める査定の手段に終始してはいけないと考えています」とカオナビの柳橋仁機氏は語る。

 この言葉は、人事評価の要諦を突いた指摘だろう。人事評価の目的は、会社が本人を正しく評価していることを理解してもらい、社員のやる気を引き出すものでなければならない。しかし、ともすれば給与額を決定するために人事評価を行うという本末転倒に陥りがちだ。

「人事評価を意欲につなげるには、本人の納得感が大事」と柳橋氏は続ける。言い換えれば、本人にとって「ピンとくる」「腹落ちする」評価である。カオナビという、顔写真を前面に押し出したシステムを開発した理由はここにある。「社員を社員番号という記号で扱い、点数という数値に置き換えた評価で、本当に本人が納得するでしょうか」と柳橋氏はこれまでの人事評価に疑問を投げ掛ける。

 確かに、社員番号や点数だけでは“血の通った”評価は行えない感じがする。しかし、問題はそういう情緒的な側面だけではない。「顔を見ることで、数字に表れてこない本人の特性やエピソードを想起することができます」と柳橋氏。顔写真は相手に対する感覚や記憶を引き出すきっかけとなるのだ。

 カオナビでは顔写真にひも付いて、異動履歴や保有スキル、趣味特技など本人の詳細な情報を見ることができるが、顔から連想される定性的な情報まで考慮してこそ、本人を納得させ、やる気につながる人事評価が可能になるのである。