「使えないMacBook」はどう進化したのか?<br />新型「MacBook Air」の意外な凄みと残された課題最薄部3ミリ、1枚のアルミニウムから削り出したユニボディという美しいデザインだけでなく、軽快な操作感が話題の「MacBook Air」。8万8800円からという価格も魅力的。

 2010年10月20日、アップルが期待のモバイルノートPC「MacBook Air」の新モデルを発表。発売開始から人気機種となった。

 初代MacBook Airは08年10月に発表された。薄型ボディで注目を集めたが、発熱がすごい上にバッテリーの持ちが悪く、モバイル用途にはあまり向いていないという弱点を抱えていた。1年後にマイナー・バージョンアップしたモデルが発売されたが、基本的にはそれほど変わっておらず、デザインのよさとは裏腹に「あまり使えないMacBook」という位置付けになり、新モデルの登場が待ち望まれていた。

 そして登場した新MacBook Air。この評判がすこぶるよい。液晶ディスプレイが11.6インチと13.3インチの2モデルとなり、ボディ最薄部は3ミリ。記憶領域はHDDを採用せずにSSDを採用。11インチモデルの最小構成では、64GBのSSD、2GBのメモリで8万8800円からと、リーズナブルになっている。

 確かに安くはなっているが、この安さだけが高評価の要因ではない。高い評価は、実はそのパフォーマンスにあるのだ。

 MacBook Airでは、前モデルと同じ規格のCPU「Core 2 Duo」が採用された。しかし、体感速度は上位モデルである「MacBook Pro」13インチモデルよりも上なのだ。

 実は、これには秘密がある。それは、SSDだ。新MacBook Airでは、SSDを基板に直接取り付けている。そのため換装はできないものの、余計なケーブルなどが不要となり、薄型化が実現。それだけではなく、HDDに比べるとかなり高速なデータの読み書きが行えるSSDを仮想メモリとして利用するため、体感速度が速くなっているようなのだ。

 仮想メモリとは、物理的なメモリが足りなくなった場合に、ハードディスクなどの記憶領域をメモリの代わりに使用して、データ処理を行うもの。WindowsでもMac OS Xでも、日常的に使われている機能だ。

 また、問題となっていた発熱問題も、SSDにしたことでかなり抑えられており、使用する上でほぼ問題がなくなっている。バッテリーの持ちも11インチモデルで公称5時間駆動、実際に使ってみても3時間以上は使えるという報告が上がっている。

 一部のユーザーなどは、「MacBook Airをメインマシンとして使ってもいいだろう」という見解を述べている。それほど快適に使えるということなのだ。

 ただし問題がないわけではない。まず、SSDにはデータの読み書き回数に上限があり、およそ5万~10万回が限度と言われている。このSSDをデータの書き換えが頻繁に起きる仮想メモリとして利用することで、「すぐに寿命に達してしまうのでは」という懸念がある。

 もうひとつは、CDやDVD、Blu-rayといった光学ドライブを搭載していない点。すでにMacintoshを所有している人のセカンドマシンとしてはもってこいなのだが、初めてMacintoshを買おうという人には、このへんがかなり敷居が高いのではないのだろうか。

 とは言え、実際に店頭で触ってみると、その快適さとデザインの美しさ、薄さは単純に所有欲をそそられる。モバイルノートパソコンという以前に、プロダクトとしての完成度が高いと思わせる製品だ。

 すでにMacintoshを使っている人は、迷わずセカンドマシンとして購入しても満足できるはず。また、初めてMacintoshを購入しようという人にとっても魅力的な機種だ。新MacBook AirでMacintoshの人気が再燃する可能性は高いだろう。

(三浦一紀)