今回は、前回のコラム「ようやく世界標準の政策を採った日本銀行 量的緩和は物価・景気にこうやって効く」の続編だ。

 量的緩和懐疑論は、印象論的なものが多いが、きちんとしたものでも、その主張はゼロ金利下では日銀による国債の購入は効果がなく、その他の金融資産の購入であれば、多少の効果はあるという程度だ。

 その前提となっているのは、量的緩和しても貸し出しが伸びない状況では、「ブタ積み」(注)になってしまうだけで、貸し出しは伸びないというものだ。(注:金融機関が、日本銀行に預け入れる無利子の預金のことを預金準備または準備という。法律で自金融機関の預金の一定比率以上を預け入れることが定められており、この比率を超える超過準備のことを俗にブタ積みという)

 それを理論的に考えてみると、量的緩和しても、バランスシートの基本論からいえば銀行の資産側の貸出は負債側の預金と連動するという意味で、表裏一体である現金+預金というマネー・ストックが増えないということをもって、量的緩和に懐疑的であるようだ。

量的緩和で政府、中央銀行、民間銀行の
バランスシートはどう変化するか

 そこで、量的緩和の効果をミクロ的にみるために、政府、中央銀行、民間銀行のバランスシート(B/S)の変化として、まとめてみよう。

まず、はじめの状態が図1だ。

シニョレッジ(通貨発行益)を見落としている<br />量的緩和「懐疑論」の誤り(注)国債Ⅰは日本銀行が保有する国債、国債Ⅱは民間銀行が保有する国債を表す。