2010年11月23日の南北朝鮮の砲撃戦を発端とする東アジアでの緊張は、11月28日から12月1日までの韓米軍事演習をピークとして、その後12月6日から12日まで韓国軍の沿岸部での砲撃訓練もあるとはいえ、一応、局地的な緊張を残しながら下火になっていくと思われる。

「北朝鮮の砲撃は神風だ」と報道された民主党幹部の発言はさておいて、北朝鮮の思惑、韓国の国内事情、米国のアジアに深く関与する姿勢、さらに中国の北朝鮮外交に焦点を当てて見てみると、日本などで報道されているように、「北朝鮮の暴挙に中国は手をこまねいている」ということはない。

北朝鮮に対して中国外交は何を求めているのか、なぜそうしなければならないのか、さらにどんな準備を秘かにしているのか、中国の外交官、学者などを取材し、その内容を整理して報告する。(北京在住ジャーナリスト 陳言)

2010年8月、訪中した北朝鮮の金正日総書記を抱擁する胡錦濤国家主席 Photo: AP/アフロ

 国際社会からの「明確に北朝鮮を非難せよ」という大合唱の中では、ロシアの外務次官でさえも、29日に韓国の李允鎬・駐ロシア大使と会談し「人的犠牲をもたらした北朝鮮による韓国領内への砲撃は非難に値する」と立場を明らかにした。

 一方、6者協議の主要メンバーとしての中国は、北朝鮮に対する内心の思惑は別として、少なくとも公的な場で非難はしなかった。これにより、北朝鮮が惹起した事件に中国が連帯責任を負わなければならない形になっている。中国はなぜこれほどにも北朝鮮に甘いのか、国際社会では理解を得られていない。

 中国国内でもインターネットでは、改革開放を頑なに拒否し、近代の歴史のなかで繰り返して中国に翻意を示しながら、自国の利益だけを最大限に追求していく北朝鮮に対しては、すでに嫌悪感が相当高まっている。

 政府は公式には何も言っていないが、世界でも有名な民間告発サイト「ウィキリークス」が暴露した米国の公電によると、中国高官の私的見解としては、「北朝鮮は大人の注意を引くために『駄々っ子』のように振る舞っている」と表現したという。北朝鮮を厄介者だと思っていることは間違いない。ただ公に北朝鮮を批判する事態にまでは、至っていない、というだけだ。