日本銀行は、金融緩和の枠組みを改め、イールドカーブの傾きをスティープ(右上がり)にすることとした。具体的には、10年物国債の利回りをゼロ程度に誘導する。

 しかし、長期金利のコントロールは、これまで日銀自身が認めていたように、きわめて難しい。

 なお、今回の政策転換は、量的政策から金利政策への転換だと言われる。しかし、量的政策の側面が「オーバーシュートコミットメント」として残っており、矛盾を含むものとなっている。

日銀の政策転換は矛盾を含み、実行も難しい長期金利を操作しようとする今回の措置は、従来の日銀の基本姿勢とは矛盾するものになっている

政策が行き詰まり
追い込まれた日銀

 日銀が政策転換を余儀なくされたのは、これまでの政策が行き詰まってきたからだ。とりわけつぎの3点で、日銀は、追い込まれた立場にいた。

 第1に、銀行の貸し出し利ザヤの縮小や年金・保険の運用難といったマイナス金利の副作用が無視できないほどになり、これらに配慮する必要があった。

 第2に、国債大量購入が限界に近づいていた。新規発行額の2倍もの国債を市場から買い上げる政策は、いつまでも続かない。日銀は、すでに発行残高の約3分の1の国債を保有している。

 第3に、長期金利までマイナスになると、銀行が国債を購入するのは非合理な行動になる。なぜなら、償還まで保有すれば確実に損失が発生するからだ。三菱東京UFJ銀行が国債市場特別参加者の資格を国に返上したのは、そうした事態への対応と解釈できる。この状態が続くと、銀行が国債ビジネスから撤退し、国債の円滑な発行に支障が生じる。

平坦になったイールドカーブを
右上がりにする背景

 新しい金融政策体系の中心は、「イールドカーブ」だ。これは、図表1に示すようなものであり、金利の期間構造を表す曲線である。ダイヤモンド・オンラインの連載「新しい経済秩序を求めて」において、すでに第74回(2016年8月18日)の図表3、4や第62回(16年5月19日)の図表1、3、そして第49回(16年2月11日)の図表2、3などで示した。