日本人は本当に“多様化”しているのか

“多様化”というフレーズが、一般的に飛び交うようになってどのくらい経つでしょうか。

「多様化するライフスタイル」、「多様化する消費者ニーズ」、「多様化する価値観」といったカタチで取り上げられ、それらに対応することが企業の生き残る条件のように言われています。

 つい先日も、あるビジネス系のTV番組で若者に人気のアパレルブランド(俗に言う109系)が取り上げられており、「多様化する若いお客さまのニーズに対応する努力を続けているから支持されている」というように総括されていました。

 確かに、その企業では「若者の気持ちを理解できるのは同世代の若者」だということで、若手社員をブランド責任者に登用したりしながら、組織を活性化させています。ですが、それが「多様化に対応できている」理由とは思えないのです。

 そこには、本当に「日本の消費者は“多様化”しているのか」、という疑問があります。

 政治の世界を取り上げてみると、「郵政民営化への賛否を問う選挙だ」という世の中の空気に、自民党が大きく議席数を伸ばすこともあれば、「政権交代」という空気で、民主党が楽々過半数を超える議席を獲得する、といったことが起こりました。

 そのこと自体の善し悪しを問いたいのではありません。つまり、ひとつの主張や価値観に世論が大きく引っ張られるような状況に対しては、“多様化”の定義が当てはまらないのではないか、ということです。

 今回はこの“多様化”について、いくつかの事例をみながら考えてみたいと思います。

バブル絶頂期にもっとも“多様化”していた自動車市場

「“消費者は多様化してる”っていうけど、ことクルマに関していえば、昔の方が個性豊かなクルマがたくさんあったよね」

 先日お会いしたある自動車メーカーの幹部の方と話しているなかで出てきたのが、この話題です。例えば、バブル絶頂期。各自動車メーカーには特徴のある車種がたくさんありました。