一流と呼ばれる「京都花街」の本物のもてなし、さりげない気遣いに触れて育った著者が、粋な大人の男になるために必要なビジネスマナーを説く連載の3回目は、「手みやげ」について。

男を上げる「粋な手みやげ」

粋なおやじの手みやげ術

 会食や会社を訪問する際に「手みやげ」を用意することがあります。なぜこのような習慣、風習ができたのかは定かではありませんが、何となく相手の方に対する思いやりや、時間を作ってくださったことに対するお礼の意味を込めるものなのでしょう。

 気持ちを表すのだからできれば粋なものを選びたいと思い、それならばいったい何をもっていけばよいのか、と思い悩むことがあります。無難なところでは洋菓子や和菓子でしょうか。自社の製品を持っていったりすることもあります。

 ある会社では、役員以上の手みやげは某有名果物屋のセットと決まっていたり、またある会社ではいつも同じお菓子屋さんの、同じ大きさの同じ菓子箱を用意していたりします。出版社なら本、化粧品会社なら石鹸、自社名のネーム入りのボールペンからラベルを誂えたワインや日本酒など、手みやげもじつにさまざまです。

 また会食であれば、そのお店が用意したお持ち帰りや、詰め合わせなどの食材が渡されたりもします。あるとき5社で食事をしたのですが、各社各人が手みやげを用意してきたので、帰りの際にはなんだかおみやげ交換会のようになってしまい、みなが紙袋をいくつも抱えて帰り、なんともおかしな風景でした。でもこの手みやげ、やはりいただくとうれしいものです。お菓子と思って箱を開けたら化粧品だったり、要冷蔵のものをそのまま放置してしまったりといった思い出がみなさんもあるかと思います。

 「手みやげには何がいいですか?」とよくたずねられることがあります。一番人気なのはやはりおいしい、でもあまり知られていない和菓子です。つぎに洋菓子。ところが最近はネットで検索できてしまうのですぐに値段がわかってしまい、なかなか「粋なおみやげ」を選ぶのは難しいようです。

 ならば、粋なおやじはどうするか?それはやはり「相手の好みや趣味に合わせられる」ことが一番でしょう。しかしそうはうまくいきませんから結局、無難なものに落ち着いてしまいがちですが、それでは芸がない。困った時の和菓子頼みで老舗の和菓子で乗り切ったりすることが多いようですが、これもどうも格好が悪い。話題の店でも、と思うと並んで買ったり、売り切れていたりとこれも難儀です。

 粋なおやじならば、身近にちょっとした贔屓の和菓子屋と洋菓子屋を持つようにすると、ほとんどのことは解決できると思います。いつも同じものを用意するのも「あの人が来ると、あれを持ってきてくれる」と意外と喜ばれたりするものです。あまり奇をてらわず、値が張るものでもなく、ちょっとした自分なりのうんちくとすすめる理由が少しあれば、手みやげは結構、喜ばれます。贈って楽しい、もらって嬉しいものは意外と近くにあるようです。

おすすめの「粋な手みやげ」
ぎぼし
http://giboshi.kyoto-shijo.or.jp/frame.htm

京都四条にある創業明治初年の昆布専門店。
とろろ昆布、おぼろ昆布、出し昆布、塩昆布、細工昆布等、昆布全般を取り扱う。高級お好あられ「吹よせ」は、あられ、海老せんべい、昆布、豆等20種類以上を混ぜ合せたていて、お茶受けだけでなく、お酒のおつまみにもぴったり。
「吹よせ」と昆布茶をセットにして「手みやげ」にすると、粋な感じがします。