参考になるテレビ番組は毎週録画して徹底的に分析する

 このように、テレビ番組は「人を惹きつけるプレゼン」の宝庫です。
 面白く、視聴者を飽きさせないために練りに練っているのがテレビ番組なので、社外プレゼンと通ずるものが多くあるのです。

プレゼン資料は「ニュース番組」に学べ!<br />前田 鎌利(Kamari Maeda)
株式会社 固 代表取締役。一般社団法人 継未 代表理事。1973年、福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。2010年に孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、初年度年間総合第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当した。その後、ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍。著者のプレゼンテーション術を実施した部署で、決裁スピードが1.5~2倍になることが実証された。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、ベネッセコーポレーション、ソニー、Jリーグ、大手鉄道会社、大手銀行などのプレゼンテーション講師を歴任するほか、全国でプレゼンテーション・スクールを展開している。著書に『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』(以上、ダイヤモンド社)がある。サイバー大学客員講師

 しかし、安易に真似をしすぎるのも考え物です。
「テレビ番組でこんな試みをしていて面白かったから」と表面的に真似をしても、結果的に滑ってしまうということになりかねません。

 たとえば、BGMや効果音。
 テレビ番組は「音」を巧みに使い、BGMで間を持たせたり、効果音で視聴者の興味を惹いたりします。そして、プレゼン・ソフトには効果音の機能が入っていますから、つい使ってみたくなるものです。

 だけど、プレゼンで効果音を使っても、うるさいと思われるだけ。逆効果であることが大半です。私もそれで大失敗したことがあります。まだ若いころに、上司のプレゼン資料をつくったときのことです。

 あのとき、私は、スライドを切り替えたり、アニメーションを動かすときなどに、いちいち効果音を入れてしまったのです。少しでも退屈されないように、という私なりの工夫だったのですが、完全に逆効果。会場からは失笑がもれました。しかも、ひとつ前のスライドに戻ったりするたびに、効果音が再び流れますから、イライラしてくるのです。

 それ以来、私は通常のビジネス・プレゼンでは一切効果音を入れないようにしています。テレビで有効な手法が、プレゼンで有効とは限らないのです。

 大切なのは、テレビ番組の表現手法そのものを真似ることではありません。映像のプロフェショナルたちが、「どのようにして人の興味を惹きつけているのか」「どうすれば、視聴者にとってわかりやすい説明になるのか」と知恵を絞っている。その思考法を推測して、そのエッセンスを自分なりに分析すること。そして、プレゼンに応用してみて、試行錯誤を繰り返すことなのです。

 だから、テレビを漫然と見てはいけません。
 プレゼンに活かせることはないかと、問題意識をもってテレビを見る。できれば、「これは参考になりそうだ」という番組は毎週録画しておくといいでしょう。そして、「どこで自分の気持ちが動いたのか」「なぜ自分の気持ちが動いたのか」と、何度もリバースしながら映像を分析してみる。これを続ければ、必ずあなたのプレゼンはワンランク上のものになるでしょう。