2005年3月期まで24期連続で経常増益を達成するなど、高収益企業の代名詞だった花王が、06年3月期以降、一転して5期連続の経常減益にあえいでいる。リーマンショックの影響もあるが、低迷の真の原因は、化粧品事業の不振とグローバル展開の遅れにある。花王は再び輝くことができるか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)

【企業特集】花王<br />世界の「Kao」へ二つの難題<br />グローバル展開と化粧品立て直し花王の企業理念を明文化した「花王ウェイ」

 中国とのあいだで尖閣諸島問題が深刻化しつつあった9月20日、花王の尾崎元規社長は上海にいた。衣料用液体洗剤の新製品「アタック瞬清」の発表会に出席するためだ。18日には北京の日本大使館前で抗議デモが起きるなど、発表会開催に当たって不安要素は尽きなかったが、尾崎社長は迷わずゴーサインを出した。

「中国は今後も大きく成長するエネルギーに満ちている。花王グループの総力を挙げ、中国で確固たる存在感のある企業になりたい」──。発表会冒頭、尾崎社長はこう挨拶し、花王の中国市場に対する並々ならぬコミットメントを表明した。

 この日発表されたアタック瞬清は、まさに花王の総力を挙げて開発された。まず同社の日本と中国の研究員が中国の852世帯を実際に訪問し、洗濯習慣を詳細に調査した。その結果、中国では9割が洗濯機と手洗いを併用していること、手洗いの際には汚れを確実に落とすためにつけ置きをすること、洗剤成分を完全に除去するためすすぎを何回も行っていることなどがわかった。つまり、中国では洗浄力が高く泡切れがいい洗剤が求められていたのだ。

 研究員たちは数百の試作品を作り、そこから四つのプロトタイプに絞る。それらを再び消費者に試してもらい改良を重ねていった。開発過程では、中国と日本の水質の違いに苦労した。おまけに広大な中国では、地域によっても水質が異なる。そこで、「北から南までさまざまな水を試して洗浄効果を最適化した」(岡田京子・花王ハウスホールド研究所主任研究員)。