2009年11月にアマゾン・ドットコムは同社史上最大の買収額でザッポス・ドットコムを買収した。アマゾンは、買収時点でザッポスが扱う靴などの商品をすでに取り扱っていたにもかかわらず、ザッポスを独立したブランドとして存続させるという。重複や余剰などの冗長性を嫌う米国式マネジメントでは珍しいこの判断は、いかにアマゾンがザッポスのブランド価値を高く評価しているかを示している。

 ブログメディアのマッシャブル共同編集者ベン・パーは、アマゾンによるザッポス買収の理由を次の4つにまとめている(mashable.com  2009年7月22日)。

1. ザッポスの大きな成長ポテンシャル
2. ザッポスの成功を実現したユニークな企業文化
3. ザッポスの伝説的な顧客サービス
4. ザッポスの人材……リーダーシップと社員

 ザッポスの成長は確かにめざましいものがあり、創業の1999年のゼロから10年後の2009年に12億ドルの売上高に達している。さらに、アパレルなど靴以外の商品の急成長もあって、2010年第1四半期は前年比で売上高は50%増。2010年11月現在2800人の従業員だが、2011年はこれにさらに2000人(シーズンの一時雇用を含む)を加える計画だという。

 こうした成長はなんといっても、既存顧客売上げが75%を占める目を見張るほどのリピート率に支えられていると言っていいだろう。つまり、新規よりもまず「既存顧客に焦点をあてたサービス」が、ザッポスの競争力の中心となっているのだ。それにしても創業10年余りのベンチャー企業で「伝説的」というのは、いささかおおげさ過ぎると思われないだろうか(2. 企業文化と4. 人材については次回触れることとする)。専門家による評価から、伝説の本質を探ってみよう。