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“全員参加のクラウド活用”を支援する
セールスフォースのしたたかな戦略
――「Dreamforce '16」現地報告

ダイヤモンドIT&ビジネス
【第131回】 2016年10月7日
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「Dreamforce '16」の基調講演で顧客に感謝する、マーク・ベニオフ セールスフォース・ドットコムCEO Photo by DIAMOND IT & Business

人工知能は裏方に徹して
決定はユーザーが行う

 米IT企業のセールスフォース・ドットコムは、10月4日~7日の4日間、米国サンフランシスコ市内で年次イベント「Dreamforce '16」(以下・ドリームフォース)を開催している。

 今年のドリームフォースの目玉は、主力のCRMアプリケーション「セールスクラウド」などと接続し、業務を支援する人工知能技術の総称「アインシュタイン」の発表だった。

 クラウドコンピューティングの代表的企業で、売上高世界第4位のソフトウェア企業が満を持して送り出す人工知能とあって、参加者の多くはその発表に大きな期待を寄せた。同時に「IBMのワトソンとは何が違うのか」「企業内のデータサイエンティストは不要になるのか」など、詳細について記者からの質問も相次いだ。

基調講演のスクリーンにアインシュタインのアニメーションが登場

 アインシュタインは、セールスフォースが提供する意思決定支援エンジンとでもいうもの。たとえば、アインシュタインが自社の顧客データを分析してスコアリングした結果を自動的に表示して、営業部員はそれをもとに訪問先を決めたり、おすすめの商品を選んだりすることができる。当初は業務を自動化するものではなく、あくまでAIによる提案、推奨をする仕組みだという。

 アインシュタインの分析のもとになるデータは、自社内に蓄積したファーストパーティデータ(シングルモデル)と、個人情報を匿名化して、セールスフォースのユーザー内で共有することを許可(オプトイン)したデータ(グルーバルモデル)の2種類から選択できる。米国ではこの10月末から各製品に実装される予定だが、テスト段階では、グローバルモデルの引き合いが多いという。

アインシュタインの開発にあたったデータサイエンティストのシューバ・ネバ氏

 セールスフォースはここ数年で計7億ドル(約700億円)を投じて人工知能に関する技術を持つ企業の買収を進めてきた。その成果がアインシュタインというわけだ。他社が音声認識などのインターフェースにも力を入れるのに対して、セールスフォースは当面、バックエンドの実用的な業務データの分析に絞ってAIを使おうとしている。

 また、もう一つの話題は「コマースクラウド」の発表だった。その名の通り企業がECサイトの設計と、その背後の課金管理などをクラウド上から作ることができる仕組みで、やはりCRMやコールセンターなど、同社の製品群とつなぎこんで顧客満足の向上とリピーター獲得につなげる製品だ。これまでセールスフォースは営業、顧客管理、マーケティング、サポートという各パートで製品群を固めてきたが、最後のピースだった直接の顧客接点や決済のパートも押さえることで、顧客の購入体験を一周抱え込むことが可能になる。

 コマースクラウドは、ECに特化したソフトウェア企業の「デマンドウェア」を今年セールスフォースが買収し、その技術を取り入れて立ち上げたサービスだ。デマンドウェアは小さな企業だが、米国ではさまざまな業種の大手企業が運営するECサイトのシステムを手掛ける実績豊富な企業で、日本でも大手数社が採用している。このコマースクラウドについても、ドリームフォースでは参加者の関心は非常に高かった。

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