梨園に生まれた男子・女子の職業選択の自由を考える歌舞伎の創始者と言われる出雲阿国は女性。自身は男役を演じ、花魁役は男性が演じるという突拍子もないコンセプトを考案した

歌舞伎役者の家に生まれたら
男の子は必ず役者になるのか

おくだ この秋は襲名披露興行があります。三代目中村橋之助さんが八代目芝翫を襲名し、それと同時に、橋之助さんの3人のお子さんも、長男の中村国生が四代目中村橋之助を、次男の中村宗生が三代目中村福之助を、三男の中村宜生が四代目中村歌之助を襲名するのです。

成毛 実に楽しみですね。とりわけお子さんたちはこれからの成長には注目したいです。ところで、歌舞伎役者の家に男の子として生まれたら、必ず歌舞伎役者になる、というわけではないですよね。

梨園に生まれた男子・女子の職業選択の自由を考えるなるけ・まこと
1955年北海道生まれ。中央大学商学部卒。マイクロソフト日本法人社長を経て、投資コンサルティング会社インスパイア取締役ファウンダー。書評サイト「HONZ」代表。『本棚にもルールがある』(ダイヤモンド社)『ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版)『教養は「事典」で磨け』(光文社)など著書多数。
Photo by Kazutoshi Sumitomo

おくだ そういう決まりがあるわけではありません。どこの家も、強制はしていません。ただ、その道を選ぶ人が多いのは確かです。

成毛 いつ決断するんでしょうね。

おくだ 決断する以前に、初舞台は踏んでいますが、おそらく、最終的に決めるのは中学生の頃ではないでしょうか。

成毛 その年頃だと、多くの人は自分が文系か理系かも決めていないでしょうね。

おくだ ですから、その時の彼らが友人とどんな話をしているのか、とても興味があります。彼らのなかにはたとえば、継ぐと決めたから中学校の3年間は部活に専念したという人もいるでしょう。師匠としては吸収力の高いその時期に稽古に励んでほしいとも思うでしょうが、親としてはそれを認めることもあります。自分も同じように決断をしてきているわけですから、その部分は子どもの人生を尊重したかったのでしょう。

成毛 ただ、親の商売を継ぐというのは、そう珍しいことではありません。

おくだ 実は私は開業医の息子なのですが、家業を継ぎませんでした。