あなたは、仕事に一生懸命打ち込む自分が好きですか。それとも、仕事量は極力少なく済ませる、合理的な自分を「素敵」だと考えますか。

 最近、ハードワークを“美徳”とした「勤勉な国=日本」の実態が崩れ始めてきた、と言われることがあります。ただ、それでも今も職場には真面目に仕事をこなす社員がたくさんいます。その一方で増加傾向にあるのが、植木等の歌う「サラリーマンは気楽な稼業」のようなマイペースな社員です。同じ給料にもかかわらず仕事量の違う社員同士では、気持ちの上での葛藤が起き、あちこちで様々な問題になっています。

 さて、ここで質問です。あなたが勤勉な社員だとして、同じ給料にもかかわらず仕事量が自分よりも少ない同僚を許せますか。

 今回は、仕事量のギャップが職場にどんな影響をもたらすのか、考えてみましょう。

仕事は短時間で処理し、定時に帰宅
「できる社員」のおかげで職場もキビキビ

「同じ給料をもらっているならば、仕事量は同じであるべき」であってほしいものです。ところが、実態は違います。やる気や能力の違いで仕事の量や質には大きな格差があります。

 例えば、広告代理店の進行管理部門に勤務するSさん(32歳)。この部門での経験も豊富で、対応能力も抜群。任された仕事はきっちりと無駄なく、短時間で処理します。そのため残業はほとんどナシ。定時=17時になればパソコンの電源を落としてサッサと帰社。「お疲れ様でした」と一番早く職場を離れます。

 ただ、勤務時間内は仕事に集中し、昼休みもコンビニでパンを買って食べながらパソコンに向かい、そのまま夕方までノンストップで仕事に集中しています。

 周囲と世間話をしない勤勉さに上司や同僚からも「職場の鬼」と崇められる存在です。まさに「できるビジネスパーソン」の典型のような仕事ぶり。なかには「面白みがない奴」と揶揄する先輩社員もいますが、一目置かれる存在なのは間違いありません。

 それに、Sさんの影響で職場はキビキビとした雰囲気が充満。他の部署より残業が少ないにもかかわらず、高い業績を上げ、高い評価を得ていました。Sさんの短時間で多くの仕事をこなすスタンスは、周囲に好影響をもたらしました。

 ところが、状況が大きく変化する出来事が起こります。Sさんの同期2名が、営業部門から異動してきたのです。