先日、こんな調査結果が発表された。全国47都道府県で「社長」に出会う確率が最も高いのは山形県である──と(東京商工リサーチ「社長の出身地調査」)。各都道府県出身の社長数をそれぞれの総人口で割ると、1位の山形県は1.28%だそうで、最下位の埼玉県(0.26%)の5倍近い。

「実直で勤勉な県民性に加え、商工業に重きが置かれる土地柄」が影響しているのではと、同社は分析しているが、確かに山形県人の働き者ぶりは定評がある。さらに、かつて国内はもちろん、多くの発展途上国で大ヒットしたテレビドラマ「おしん」にも描かれていたように、忍耐強いのも特徴だ。隣の秋田県では今でも、「嫁をもらうなら山形から」などといわれる。

 イケイケとはほど遠い、我慢が要求される昨今の経営環境の下では、この二つの気質を兼ね備えていれば鬼に金棒の感がしないでもない。

 ひと口に山形県といっても、県内は、庄内と最上という二つのエリアに大きく分かれる。今でこそ最上地方のほうが政治・経済の中心になっているが、江戸時代までは庄内地方のほうがすべての面で先を行っていた。

 国内の物流で大きな役割を果たしていた北前船の寄港地・酒田は庄内の中心。その繁栄ぶりは大変なものだったし、そうしたなかで社交性も自然と培われていった。それだけに、ビジネスに対する勘のようなものが働くのだろう。上方の文化や風物がいち早く入ってきた影響もあり、鶴岡では学問や文化が盛んであった。

 一方、山間部の最上地方は、冬ともなると雪深いし、どうしても内向的でもの静かになる。だが、仕事にじっくり打ち込む姿勢や我慢強さは、そうした環境の下でこそ身につくもの。そのあたりが、先のデータにも大きな影響を与えていそうである。

 ただ、どちらも根は東北人だから、実直でまじめだし、ふだんは口数もそれほど多くない。そうした部分を考慮しながら接していかないと、信頼されない恐れがある。山形県人とは、じっくり辛抱強く付き合うことで、互いのよさを見出し、いい関係が築けるのではなかろうか。

◆山形県データ◆県庁所在地:山形市/県知事:吉村美栄子/人口:117万562人(H22年)/面積:9323平方キロメートル/農業産出額:2045億円(H19年)/県の木:さくらんぼ/県の花:べにばな/県の鳥:オシドリ

<データはすべて、記事発表当時のものです>