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モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

トヨタとスズキは「資本提携」まで踏み込むか

佃 義夫 [佃モビリティ総研代表]
【第41回】 2016年10月21日
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Photo by Akira Yamamoto

トヨタとスズキが緊急会見
内容は「業務提携に向けた検討」

 世界の自動車産業の盟主であるトヨタ自動車と世界10位で国内販売3位のスズキが10月12日夜に緊急記者会見を行った。会見には豊田章男トヨタ社長と鈴木修スズキ会長と両社のトップが登場したが、その内容はあくまでも「業務提携に向けた検討」であり、極めて異例な会見だった。

 というのも、まず、両社は業務提携を締結したわけではない。「提携を検討する」段階でのトップ会見であるからだ。さらに、こうした両トップが登場するような会見はホテルなどイベント会場を利用するのが常である。

 ところが、今回はあえてトヨタ東京本社の大会議室で行った。会見の席上、豊田章男トヨタ社長と鈴木修スズキ会長は、内容をしきりに質問するマスコミ側に対して、お互いに気遣いながら提携検討については「これから考え、決めていく」の一点張りだった。まさに『のれんに腕押し』で終始し、押しかけた記者サイドを嘆かせた。

 この「トヨタ・スズキ提携へ」の両社トップ会見に見る筆者の分析は、次の通り。まず、スズキのカリスマ経営者である鈴木修会長に、自動車をめぐる技術潮流の大きな変化に対し、スズキの将来への危機感と深慮遠謀があること。一方、トヨタは章男体制8年目を迎えて、改めて「世界の盟主」として地盤を強固にするためのチャレンジがあること。つまり、そのチャレンジを「オールジャパンチーム」で進める構想のもと、スズキとの提携に踏み切ったとの見立てである。

 この両社提携は、業務提携にとどまらず資本提携まで踏み込んだとしても、スズキは独自性の確保を主張するだろうし、トヨタもこれを担保するだろう。トヨタはスズキが圧倒的なシェアを持つインド・ハンガリーでスズキの独自性を尊重しながら協調するという海外戦略を取りつつ、グループ子会社であるダイハツとの協調路線という「2本立て」による事業戦略で、軽自動車・小型車分野の強化を狙うだろう。

 つまり、トヨタはダイハツというトヨタグループにおける「内枠」のグループ企業のほか、スズキという「外枠」のグループ企業群との連携を加えて、欧米自動車メーカーへの対抗軸を形成していくグローバル戦略である。

 今回、提携に踏み切ったスズキも、今年、強力なライバル関係にあったダイハツがトヨタの完全子会社となったこともあり、自動車のあらゆる先進技術をトヨタとの連携で補う一方、ダイハツと協調と競争の関係でグローバルを生き抜いていく決断としたのであろう。

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佃 義夫[佃モビリティ総研代表]

つくだ・よしお/1970年、創刊86周年(2014年2月時点)の歴史を持つ自動車産業日刊専門紙『日刊自動車新聞社』入社、編集局に配属。自動車販売(新車・中古車)・整備担当を皮切りに、部品・物流分野を広域において担当した後、国土交通省・経済産業省など管轄官庁記者クラブ、経団連記者クラブ(自工会分室)と、自動車産業を総合的に網羅し、専任担当記者としてのキャリアを積む。その後、該当編集局内における各分野のデスク・論説担当編集局次長を経て、出版局長として自動車産業オピニオン誌『Mobi21』を創刊。以降、取締役編集局長・常務・専務・代表取締役社長を歴任。45年間の社歴全域で編集・出版全体を担当、同社の「主筆」も務める。日刊自動車新聞社を退任後、2014年に「佃モビリティ総研」を立ち上げ、同総研代表となる。


モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

「自動車」から「モビリティ」の時代へ――。クルマ業界が変貌を遂げつつあるなか、しのぎを削る自動車各社。足もとで好調を続けるクルマ業界の将来性と課題とは、何だろうか。日本の自動車産業・クルマ社会をウオッチしてきた佃義夫が、これまでの経験を踏まえ、業界の今後の方向・日本のクルマ社会の行方・文化のありかたなどについて、幅広く掘り下げ提言していく。

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