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焦点:個人情報のビッグデータ化、人権侵害防止法の整備求める声も 

2016年10月20日

[東京 20日 ロイター] - 政府・自民党は、成長戦略の一環として個人情報データを幅広く活用するため、複数の法案を準備している。ただ、専門家からは民間企業への個人情報拡散によって、使途コントロールや人権保護に問題が生じるリスクを指摘する声が出ている。基本的人権を侵害するような差別を禁止する法整備に関し、政府・与党内で対応が遅れているためで、同時に整備が必要だと指摘する声も出ている。

<個人データ活用の遅れに危機感>

 「日本がいくらAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を推進しようにも、そこに流れるデータがなければ話にならない」──。

自民党IT戦略特命委員会の平井卓也委員長(衆院議員)が指摘するように、日本国内では個人情報の定義があいまいなうえ、個人情報保護のための規制が自治体ごとに異なり、企業が個人データを活用するには、極めて高いハードルが存在してきた。

この状況を変えるきっかけになったのが、昨年成立した「改正個人情報保護法」。個人情報の定義を明らかにし、匿名化するなど厳格なルールのもとで個人情報の第三者への提供が可能となった。

平井衆院議員らが中心となり、死蔵されてきた個人情報を共通利用し成長戦略にいかす目的からデータ活用の原則を定めた「官民データ活用推進法」(仮称)をまとめた。公明党、民進党、日本維新の会にも呼びかけ、早ければ今の臨時国会での共同提案を目指している。

法案成立後は、安倍晋三首相を議長とした官民データ活用戦略会議を立ち上げ、活用計画の策定や体制の整備を進める予定となっている。

<医療データは別扱い 世界一の医療データ蓄積目指す>

さらに、内閣官房では医療情報について、ビッグデータ化を可能にする法案を準備中だ。「究極の個人情報」とも言われる医療情報は、より厳重な情報管理の必要性がある。

一方、今の医療技術では救えない難病などの患者の生命を救うため、膨大な医療データをビッグデータ化し、最先端の医療技術や新薬開発に利用する考え方があり、政府はその面での情報活用にも意欲を示している。

内閣官房で準備を進めている法案では、国民皆保険で集積される膨大な医療データを匿名化。第三者への提供を担う「代理機関」を創設し、日本国内における医療先端研究の魅力を高めるほか、ヘルスケア産業の拡大にもつなげる狙いがある。

政府関係者によると、人口減少が進む中で、この分野で中国に追い付かれていない今なら、日本が世界で最も整備されたビッグデータの集積地になることができるとの思惑があるという。

同法案は来年の通常国会での成立を目指している。

<個人データ売買市場拡大のリスクも>

しかし、 個人の同意なしに活用できる医療データ規模を拡大した場合、特定の個人の遺伝的な情報が漏れた場合、甚大な人権侵害に結びつくリスクを指摘する声も、医療専門家の一部から出ている。

また、個人情報に関するこ複雑な議論が国民の知らない場で議論されることに懸念を示す医療関係者もいる。

例えば個人が特定できる「遺伝子(ゲノム)情報」の第三者提供について、一部でも情報提供すべきとの意見が、専門家の間で出ている。

国民にとって重大な関心事であり、超党派の国会議員らが「遺伝医療・ビジネスを取り巻く諸課題を考える勉強会」を立ち上げ議論している。

医学研究者のひとりは「医療機関が取り扱う医療データと、ビジネスとして活用するデータを分けないと混乱を招く」と指摘する。

必要な分野に適正に医療情報を活用するためにも、米国で2008年に成立した遺伝情報差別禁止法(GINA法)のように「個人情報によって基本的な人権が差別されない法律が日本にも必要ではないか」と、その研究者は提言する。

ビジネス利用された個人データが、規制の網をかいくぐって流出する事件も相次いでいる。

個人情報保護に詳しい原後総合法律事務所・牧田潤一朗弁護士は「正規のルートでさえ事件が後を絶たないが、地下ルートでは現在でも使途がコントロールできない状態。成長戦略に活用するとしても、データ提供はできるだけ限定し、本人関与は情報誤認の訂正権だけでなく提供拒否権も付与すべき」と言う。

国の個人情報保護の体制もまだ道半ばだ。「改正個人情報保護法」の成立により、個人情報漏えい事件への取り締まりや調査権限を担うのは「個人情報保護委員会」だ。

そのスタッフ数は78人。任務の遂行に必要とされている200人の半分以下で、国税庁並みの強い取締りができるのか、不透明だとの声もある。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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