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日弁連が死刑廃止宣言、「存続派」弁護士の主張とは

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第181回】 2016年10月22日
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 今月七日、福井市で催された“人権擁護大会”で日本弁護士連合会(日弁連)は「二〇二〇年までに死刑制度の廃止を目指し、終身刑の導入を検討する」宣言を採択した。法改正を勝手に宣言されても困るが、とどのつまりはアムネスティの主張よろしく”日本から極刑をなくしましょう”と言いたいのである。

 “人権派”と呼ばれる弁護士さんたちが死刑廃止を訴えたのは二〇年以上も前に遡るが、日弁連に言わせると、刑罰は再犯防止につながるものでなければならず、また、どんな罪を犯した人間であろうと“社会性と人間性の回復”を後押しする制度の導入が社会の安全につながる――、とのことだ。

 死刑を廃止すれば、死刑を宣告されるような非道な事件を起こした被告でも再び事件を起こす危険性を回避できるということか。何人殺しても死刑にならないとなれば、殺人事件はより凄惨に凶悪化するだろうことがわからないのか。

 もし私が家内を殺され、その報復で犯人を殺し、なおかつ犯人の伴侶や子ども、親や兄弟に至る家族全員を皆殺しにしたとしても私は死刑にならないということだ。死刑にしてほしいとの理由で無差別殺人を繰り返しても死刑にはならないのである。

 採択に先立ち、大会では二十四人の弁護士がそれぞれの立場から議論を交わしたそうだ。冤罪事件として名高い“袴田事件(二〇一四年に再審開始が決定)”の弁護団長を務めた西嶋勝彦弁護士は言う。

 「冤罪が疑われる死刑事件が多くある。誤判がある以上は(死刑制度を)廃止すべきだ」

 対して、被害者支援に取り組む高橋正人弁護士の反論はこうだ。

 「被害者遺族が犯人を殺してもいいのか。死刑の廃止はむしろ秩序を乱す」

 日弁連には約三万八〇〇〇人の弁護士が名を連ねるが、この日の宣言には大会に来場した七八六人の多数決で採択に至った。内訳は、賛成五四六人、反対九六人、棄権一四四人である。国政選挙における一票の格差を違憲だと訴える弁護士さんも少なくないのに、三万八〇〇〇分の五四六で死刑廃止を“宣言”するのもどうかと思うのは私だけか。

 この“死刑廃止宣言”は、ちょっとした騒動を引き起こした。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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