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高圧経済と低圧市場、総需要政策に期待高まらず薄商い

2016年10月24日

[東京 24日 ロイター] - 多少のインフレや労働ひっ迫が起きても、金融緩和や財政刺激を継続する「高圧経済」政策への注目度が、世界的に高まってきた。長期停滞を抜け出す秘策と言えそうだが、株式市場での期待感は高まってこない。

むしろ円債市場の活力が失われ、金利上昇という財政規律の警告機能を失ったことで、際限のない財政拡大政策への警戒感がじわりと強まっている。

<イエレン発言で注目>

 「高圧経済(High Pressure Economy)」政策。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長などが最近主張している。金融緩和と財政政策により、力強い総需要と労働市場のひっ迫という高圧経済を一時的に続けることで、リーマン・ショック以降続いている長期停滞から脱することができるという。

日銀が9月に導入したオーバーシュート型コミットメントも「高圧経済」につながる政策だ。消費者物価指数の実績値が安定的に2%を超えるまで長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策を継続すると約束。見通しではなく、実績値としたことで、一定期間はある程度のインフレを許容することになる。

ヘリコプターマネー議論は下火になったものの、非伝統的な金融緩和政策の限界も近づいているというのが、多くの市場関係者の認識だ。「これからの政策は、金融緩和や財政刺激を強く、長く続けるしかないというのが、セントラルバンカー達の共通の認識となりつつある」(MCP・シニアストラテジストの嶋津洋樹氏)ようだ。

 「高圧経済」政策は、株式などリスク資産市場に対してはポジティブ要因となる。日本株はレンジを突破してきたが、海外のヘッジファンド動向に詳しい金融コンサルティング会社のストラテジストによると「一部の投資家は、金融緩和と財政刺激の高圧経済のプラス効果を見込んで買いに動いている」という。

<低調な売買代金>

ただ、そうした買いは、まだごく一部に過ぎない。24日の東証1部売買代金は1兆5658億円と今年2番目の低水準。東証全体の株式売買代金(1部、2部、マザーズなど内外株式の総合計)をみても10月に入って減少しており、21日までの1日平均は2兆2509億円と今年に入って最低だ。

ボリューム増加のカギを握る外国人投資家は、10月に入って買い越している。現物と先物合計で第1週は7659億円、第2週は1774億円の買い越しだ。だが、年初から9月までに約7兆2800億円を売り越した後であり、ショートカバーの可能性もある。本格的な買い出動かは、もう少し見極めが必要だ。

実際、日経平均<.N225>は10月に入って11日と20日にレンジを上抜く動きをみせたが、両日ともに目立ったのは、同じ欧州系証券1社の先物買い。大勢は依然慎重な動きだ。いわゆる「閑散に売りなし」で大きな売りも出ておらず、株価はいったん上がった水準で底堅く推移しているが、相場の上昇エネルギーは乏しい。

 「金融緩和は続けるにしても、画期的な新政策は期待薄。財政政策もその金額以上の景気刺激は期待しにくい。政策効果への期待感が高まっておらず、投資家は総じて慎重だ」とJPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は話す。

<もう1つの「低圧市場」>

株式市場のボリューム低下は「金融緩和や財政出動に歯止めがかからないことへの警戒感の裏返し」(外資系投信)との見方もある。もう1つの「低圧市場」である日本国債市場では、財政規律の警告機能が事実上失われているためだ。

日銀が10年国債の利回りをゼロ%程度に固定するイールドカーブ・コントロール政策を始めたことで、市場のボラティリティと流動性は一段と低下。日本国債の新発10年344回債は今月19日、約1年1カ月ぶりに取引が成立しなかった。

閑散相場のなかで、固定されていく金利。SMBC日興証券の試算では、10年金利がゼロ%で横ばいとすると、国債の支払利子は約10年かけてゼロに近づく。プライマリーバランス(PB)の赤字が膨らんだとしても、トータルの財政赤字は減少傾向をたどる見通しだ。

15年度までの10年間で公債残高は282兆円増加したが、25年度までの10年間では194兆円程度にとどまるという。

財政出動を行いやすくするということ自体は悪いことではない。しかし、SMBC日興証券・日本担当シニアエコノミストの宮前耕也氏は「野放図な財政拡大を止めるのが金利の役割だが、イールドカーブを固定化してしまえば、警告機能は効かなくなる」と指摘。財政健全化のインセンティブが低下すると警戒感を示す。

財政出動が日本経済の持続的な成長力を高めることができればいいが、世界的な低金利は世の中に有望なビジネスが乏しく、資金需要が乏しいことも示している。「低圧市場」は「高圧経済」への慎重な見方を反映しているとも言えそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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