CEO、俳優、TVパーソナリティ、IT企業にまで広がる
「マインドフルネス」

 バズワードになった当初は、ヴィーガンだ、マクロビオテックだ、ヨガだ、と東洋的な健康法ブームに乗っかった、意識高い系の男女が飛びついている、といったイメージが先行していた。マインドフルネスの講座にやってくる人の中には、そこで仕事上のコネを作ったり、ナンパ目的など、禅僧の人が聞いたら怒りそうな動機の人が混じっていたことも否めない。

 だが、カバット=ジンの研究所は、米マサチューセッツ医大傘下のれっきとした研究所として、瞑想がもたらす効果を謳っている。痛み止めが効かない心身の苦痛を和らげたり、うつ病治療に効果があったり、不眠症を治すなど、その有用性はバラエティーに富んでいる。

 今では高校のアメフトチームや、成績不振で困っている公立校までもが「マインドフルネス」をプログラムの一環として取り入れている。ストレスがかかりそうな状況になったら、姿勢を正して目を瞑り、深呼吸をして意識を集中させる…こんなシンプルなメソッドが今まで見落とされていたのが不思議なくらいだ。

 最近もニューズ・コーポレーションのルパート・マードックが、ツイッターで「最近は“超越”瞑想(マインドフルネス瞑想のひとつで、ケイティー・ペリーやキャメロン・ディアズもハマっているとか)というのを試した」と言っているくらいなので、これは老若男女の関係なく広がっているようだ。

 世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターのレイ・ダリオCEOも「私の成功に大きく貢献したのがマインドフルネス瞑想だ」と言い切っているし、他にもフォードのビル・フォード会長、リンクドインのジェフ・ウェイナーCEOもマインドフルネスを実行しているとか。

 ビジネス・エグゼクティブに限らず、マインドフルネスに取り組み、推進しているセレブには、映画監督のデイビッド・リンチ、TVパーソナリティーのオプラ・ウィンフリー、レコード会社デフ・ジャム創設者のラッセル・シモンズらの名前も挙がっていて、実にバラエティー豊か。

 だがやっぱり目立つのはIT企業への浸透ぶりで、グーグル、アップル、アメリカ・オンラインといったトップ企業では、エグゼクティブだけでなく、一般の社員向けにマインドフルネス講座を実施している面白いところでは、とうとう日本上陸が決まったばかり、アメリカで店舗数ナンバーワンのチャイニーズフード・チェーン店「パンダ・エクスプレス」のアンドリュー・チェーンCEOもマインドフルネス信奉者で、ある会議の席で、ハイテンションになってしまった店長を落ち着かせるために会議を途中で打ち切り、みんなに瞑想を促したという。