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インタビュー:長期金利目標に副作用=武藤大和総研理事長

2016年10月26日

[東京 26日 ロイター] - 元日銀副総裁・財務次官で、現在は東京五輪・パラリンピック組織委員会事務総長を務める大和総研の武藤敏郎理事長が26日、ロイターの取材に応じ、日銀による「イールドカーブ・コントロール(YCC)」への転換は、「金融緩和限界論に配慮したもの」として一定の評価を示した。

一方、「空前の金融緩和」は債券・株式市場や国の財政規律などにさまざまな副作用を示していると懸念を示した。

特に、日銀が新たな枠組みで長期金利をゼロ%に事実上固定したことで、政府にとって「政治的リスクのある消費増税よりも(国債発行という)コストのない手法を選ぶのが合理的」となり、「財政規律が少し緩んできている」と懸念を表明。金融緩和を縮小する出口局面では、海外投資家が国債を売り浴びせるリスクもあるとした。

主なやり取り以下の通り

<サプライズ手法に限界、対話型政策運営必要>

──9月の日銀政策転換どうみる

 「銀行の収益や量的緩和の限界説に一定の配慮をした点はプラスに評価すべき」「黒田日銀は(物価目標)2%の達成に期限を設けたのが不適切だった。達成はかなり先にというのが一般的な理解。長期戦を覚悟せざるを得ず、今回の枠組みは持久戦に向けた戦略だ」

 「これまでサプライズ形の政策運営を行ってきた。次々と手を打っているときには有効だったが、限界が近づきつつある中でサプライズは通用しなくなっている。むしろネガティブサプライズとなる可能性があり、政策変更は市場に事前に織り込ませる対話型が望ましい」「特に緩和縮小・出口局面では対話型が非常に重要だ」

<日銀緩和で債券市場は機能停止、株も不活性>

──新たな課題は

 「現在の金融緩和は空前の規模で、当然のことながら副作用がある」「債券市場はYCCにより完全に機能停止状態、株式市場も極めて不活性な状態。株は下げないと買いも入らない」

 「日銀が長期金利目標をゼロ%としたことで、財政規律という観点では障害がなくなった状態になった。消費税を引き上げるなどの政治的リスクを冒すよりも、コストのない手法を選ぶのが合理的な状態になり、金融と財政が非常に依存度の高い状態になっているのも弊害」

 「金融と財政の連携強化はポジティブな面もあるはずだが、イールドカーブ・コントロール導入の際は実体経済への影響に対する説明が十分でなかった」

<財政規律が不明確なら海外投資家が国債売り込むリスクも>

──財政への影響どうみる

 「国債依存度が3─4割との現状は他国と比べ非常に財政出動依存度の高い経済。財政規律が少し緩んできている可能性がある。長期的には財政規律をコントロールしている姿勢を示してほしい」

 「日本国債は一定程度海外投資家も保有しており、財政規律のメッセージを明確に示さなければ、日銀が出口に向かう局面などで海外投資家が国債を売り込むリスクもある」

今後の日銀の追加緩和手段として、「枠組み変更したのに再び量的拡大するのには違和感があり、金利引き下げと思われる」と指摘。一方、「金融機関への配慮などの制約が働く可能性はある」として、安易にマイナス金利の深掘りに動けないとの見方を示した。

<日銀外債買い入れ、米ドル乱高下・国際的合意必要>

──市場では今後円高が進んでも財務省・日銀による為替介入が難しくなっているとの見方が多い

 「為替レートが乱高下すれば介入はあり得る。100円が90円になるような乱高下であれば、欧米金融関係者に理解が得られる」と擁護した。

──日銀による外債買い入れの可能性について

 「日本単独では通用しない、中国による米国債売却などで米ドルが乱高下するような場合、国際的な合意があれば可能」

──6月の英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)は英国に視察に行かれた

 「英への移民流入については厳しい制限が設けられる可能性があるが、英・EU間の通商協定はある程度のものが結ばれるのではないか。ブレグジットの影響は当面大きくないというのがコンセンサス。当初予想された悪影響は冷静に消化されている」

──米大統領選、市場で一定程度織り込まれている12月の米利上げをどうみる

 「クリントン女史が優勢と伝えられており、クリントン大統領となればオバマ政権と非連続な政策を行なう可能性は小さい」

 「イエレンFRB(連邦準備制度)議長は実施したいだろうが、経済指標次第なので予測が難しい」

(竹本能文 木原麗花 編集:吉瀬邦彦)

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