重心は「低く保つ」は間違っている?

中西】僕がいつも姿勢に関して意識しているのは、東洋医学的なボディイメージなんです。
よくスポーツでは「重心を低く保て」というようなことを言いますけど、僕は「重心は高く保つ」のが正しい姿勢だと考えています。つねに宇宙に引っ張られている感覚を保つイメージです。

一流の人はなぜ、瞬時に判断を変えられるのか?

重心が低いと、たとえば階段を上がるときにもすごく大変です。平坦な道を歩くときにも、自分の身体をいちいち持ち上げなければならない感覚になる。でも重心が高い位置にあるイメージを持つと、動くのも楽だし、俊敏に動ける。その際にも、舌を意識することによって、重心を高く保つことができるんです。

久賀谷】たしかに解剖学的にも「体」と「頭」は連動していますから、「重心を頭に近いところに置く」というイメージが助けになる場合はあるでしょうね。

中西】これはある別の先生から伺った話ですが、内臓を覆っている筋膜って、実は眼球の下にある「蝶形骨」の周りの筋肉が支配しているらしいんです。だから蝶形骨の周りの筋肉が硬くなってしまうと、内臓を覆う筋膜も硬くなって、上半身と下半身がバラバラになってしまう。

久賀谷】どうすれば、蝶形骨の周りの筋肉を柔らかく保てるのですか?

中西】両耳を左右に引っ張って、鼻から空気を入れるんです。すると、目と目のあいだに緩みができます。このときに、ピンポン玉1個くらいの空洞を目と目のあいだにつくるイメージを持つといいです。そして眼球は、つねに上を向けること。伏し目になってはいけません。

一流の人はなぜ、瞬時に判断を変えられるのか?

久賀谷】そう、初めて中西さんに会ったときは、「目力」が強い方だなと感じました。

中西】それは自分で意識して、眼球を上げているからなんです(笑)。僕自身、もともとはこんな眼球の位置ではありませんでした。

久賀谷】姿勢にこだわるにしても、まさか眼球の位置にまでこだわっていらっしゃるとは…。徹底していますね。

中西】僕は現役時代から「自分はサッカー選手としては二流だ」という自覚がつねにありました。つまり、一流のプレーを再現するために、正しい姿勢、正しい呼吸を研究し続けたんです。それを模索することによって、身体の動きがよくなっただけでなく、思考もどんどん深くなっていき、気分も前向きで晴れやかなものになっていったんです。
自分が体験したこの変化を、できるだけたくさんの人に伝えたいんです。もちろん「ほんとかよ!」って笑って済ませてしまう人もいますけど、少しでも僕の話を聞きたいと言ってくれる人には惜しみなく伝えています。

一流の人はなぜ、瞬時に判断を変えられるのか?

久賀谷】なるほど。自分なりの仮説をもとに、しっかりと自分の身体で実験をして、結果を得たうえで、指導をしているわけですね。すばらしい!

中西】ありがとうございます。その意味で久賀谷さんの『最高の休息法』は、僕にとっては「答え合わせ」みたいな本でもあったんです。長年、自分の中で「仮説」として立てて、いい結果を得られたものを信じて続けてきたわけですが、久賀谷さんの本を読んでその多くを「やはりそうだったんだ!」と再確認できたんです。