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焦点:運用多様化に挑戦する生損保、ヘッジ付米国債の「代役」探す

2016年10月28日

[東京 28日 ロイター] - 国内主要生損保の2016年度下期・資産運用計画では、多様な債券への投資に挑戦する姿が浮かび上がる。低金利が続く日本国債から「主役」の座を譲り受けたヘッジ付き米国債も、ヘッジコストの上昇で利回り確保が難しくなってきたためだ。また、ヘッジを外したオープン外債を増やす動きも目立ち、一段とリスクに神経質になる展開が続きそうだ。

<広がる投資先、聞き慣れない名前も>

TLAC債、AT1債(CoCo債=偶発転換社債=と呼ばれる債券の一種)、航空機ファイナンス、グリーンボンド、社会貢献債──。いずれも国内生損保の16年度下期・資産運用計画の発表の席で出た投資資産の名前だ。

明治安田生命は16年度上期に、米国の住宅ローン担保証券(RMBS)や、TLAC債、インフラ関連の私募債のほか、AT1債やハイブリッド債などを積み増した。

第一生命は下期も引き続き、インフラ投資や航空機ファイナンスなどの実物資産投資を注力領域として強化する方針だ。「インフラファンドと直接投資の両面から、効率的に新たな市場にアクセスする」(運用企画部運用企画室長の渡辺康幸氏)という。

日本生命は今年度「運用力強化チーム」を設置。先進投資事例の研究やヘッジ取引の高度化を行う。成長・新規領域への投融資は3─5年で1兆円を目指す計画だが、今上期の実績は2500億円と想定よりペースが速い。グリーンボンドや社会貢献債、ESGファンドなどへの投資を進めている。

運用の多様化・高度化はここ2─3年で大きく進んだが、それら資産への投資規模はまだ小さく、全体に対するリスクも大きいわけではない。しかし、日本だけではなく、世界的な低金利環境が一段と進む中で、国内生損保のイールド・ハンティング(利回り追求)のフィールドが広がっている。

<多様化促したヘッジコスト上昇>

こうした動きを促している大きな要因は、ドルのヘッジコスト上昇だ。かつて運用資産の過半を日本国債に投資していた日本の生損保だったが、国内低金利化が加速。円金利資産の代替として「二代目」に据えたのが為替ヘッジ付の米国債だった。

しかし、今年はドルのヘッジコストがどんどん上昇。9月末には1.7%程度に上昇し、昨年12月の米利上げ後もなかなか米金利が上がらないなかで、3カ月間のヘッジで10年米国債を買ったときの利回りがついにマイナスになった。

ヘッジ付きの外貨建て債券全体では、今年度増加予定の運用計画も多いが、中身は米国債から、利回りのより高いエージェンシー債やハイブリッド債、社債など各種債券にシフトしているのが実情のようだ。

 「下期以降もドルのヘッジコストは、高水準が続くとみている。円金利資産の代替としてきたヘッジ付き米国債は、その役割を終えつつある」と、日本生命・財務企画部長の佐藤和夫氏は話す。日生は欧州債や社債などに分散投資を図っていく方針だ。

ただ、ユーロのヘッジコストはドルに比べて低いが、一部の欧州債には政治リスクもある。米国債の「受け皿」となれるほど流動性の高い国債や社債は多くない。朝日生命の資産運用企画部長の鶴岡尚氏は、欧州債投資に関し「1%程度の利回りを確保するためには超長期債に投じなければならず、金利変動リスクを考慮すると手を出しにくい」と話す。

<オープン外債は対応二分>

米国債は為替ヘッジを付けなければ、10年物で1.8%程度(28日現在)の利回りは確保できる。円高リスクはあるものの、ある程度の利回りと、相場が急変した際にすぐ売れるという流動性を考慮すれば、米国債は依然最も有力な投資先だ。

富国生命は今年度、オープン外債は当初計画で横ばいの予定だったが、上期は2100億円の増加と想定外の積み増しとなった。ヘッジコストが上昇し、円高が1ドル100円付近に進んだ夏場以降に大きく増やした。上期に年度計画分をほとんど積んでしまったが、95円に向かうような円高局面では、下期も増やす方針だという。

オープン外債を増やすとリスクウエートは上昇するが「ソルベンシーマージンは十分あり、財務上、特に問題にならない」と富国生命の渡部毅彦・財務企画部長は話す。円高次第でオープン外債を増やすという声が、複数の生損保から出ている。

一方、為替リスクを依然警戒する投資家も少なくない。東京海上日動火災保険はオープン外債投資について、下期も「機動的な対応」にとどめ、ヘッジ外債を柱とする方針を維持する。「米政府がドル高を容認しない姿勢を示している」(岳俊太郎・資産運用第2部次長)ため、ドル高/円安の進行が見込みにくいという。

<難しいマイナス金利国債への投資>

各社の日本国債への対応は慎重姿勢でほぼ横並び。マイナス金利の国債には投資しないという生損保が多い。

日銀はイールドカーブ・コントロールを導入し、10年国債金利が一時のマイナス0.3%からマイナス0.06%に浮上するなど、一定のスティープニングをもたらしている。しかし、運用の現場からは、もう少しイールドカーブが立たないと投資は難しいとの声が漏れる。

あいおいニッセイ同和損保の運用企画部長の藤原尚樹氏は、日銀のイールドカーブ・コントロール導入について「長期金利が過度に低下することに配慮されたので、我々の運用には望ましい政策と受け取っている。ただ、正直、もう少しイールドカーブが立つことを期待している」と話す。

ただ、日銀による長期金利固定化は、国債市場のボラティリティーの低下ももたらした。生損保はALMの観点から国債は持ち切りがほとんどだが「ボラが低下すれば、ロールダウン効果をねらった売買もしやすくなる」(中堅生保の運用担当者)との声も出ている。こうしたディーリング的な動きが広がるかも、下期の注目点となりそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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