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英政府の日産支援は高くつく可能性、算定の難しさも

ロイター
2016年10月31日
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10月27日、日産自動車が英サンダーランド工場での新型車製造を決断するに当たり、英政府はEU離脱によって日産に不利益が生じた場合には支援を行うと約束した。写真は2015年11月、東京モーターショーでの同社ロゴ(2016年 ロイター/Issei Kato)

[ロンドン 27日 ロイター] - 日産自動車が英サンダーランド工場での新型車製造を決断するに当たり、英政府は欧州連合(EU)離脱によって日産に不利益が生じた場合には支援を行うと約束した。

 ただ、英国日産の欧州大陸向け輸出はスイスの統括会社を経由しており、英国がEU単一市場へのアクセスを維持できなかった場合に政府がどの程度の負担を迫られるのか試算するのは難しい。

 日産は28日、スポーツタイプ多目的車(SUV)「キャシュカイ」と「エクストレイル」の新型車を英サンダーランド工場で生産することを決めたと発表した。

 日産は9月、英国のEU離脱で自動車輸出に新たに関税が設けられた場合、英政府が補償を約束することが英国への追加投資の条件という認識を示していた。

 日産の決算報告によると、英国日産の自動車販売は年間53億ポンド(約6800億ドル)。このうち欧州大陸への輸出は55%で、推計で約29億ポンドになる。

 世界貿易機関(WTO)の規則に従ってEUは、域外から輸入される乗用車に10%の関税を適用している。つまり英国が単一市場へのアクセスを失う場合、日産は英国からの輸出に2億9000万ポンド(約370億円)の関税が課される計算だ。

 自動車メーカーにはさらに通関に掛かる費用、付加価値税(VAT)の前払いなどの負担ものしかかる。

 メイ英首相のスポークスマンは27日、日産に何の補償案も提示していないと述べた。

 しかし事情に詳しい関係者がロイターに語ったところによると、英政府は日産に対して、EU離脱で日産の競争力が低下した場合には特別な支援を行うと書面で約束したという。

 日産のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)とメイ英首相は今月初め、EUから関税を課された場合の影響について協議した。

 ただ、英国日産の主要な輸出先はEUではなく、全生産分が欧州統括会社の日産インターナショナル(スイス)に売却されている。多国籍企業がグループ内で利益を税率の低い地域に移し、節税効果を上げるのはよくあることだ。外国企業が国外での事業で稼いだ利益に対してスイスが課している税率は10%以下である。

 英国日産は決算報告で、こうした扱いについて英国の税務当局にすべて報告済みだとしている。

 エクセター大学ビジネススクールのリン・オーツ教授(税制・会計学)は、日産の欧州大陸向け輸出の仕組みが複雑なため、英政府が日産に与える補償コストを算定するのは厄介だと話す。

 シティ大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授(国際政治経済)も英国がEUを離脱した後、英国日産の事業についてどの決算報告を使い補償額を推計するのかが不透明だと指摘。英政府は企業の税逃れ撲滅を公言しており、英国以外での決算報告に基づいて補償額を算定すれば、政府は批判を受ける恐れがあると述べた。

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