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アングル:安倍政権の「未来投資」に陰り、ロシア支援優先で

2016年10月31日

[東京 31日 ロイター] - 安倍晋三政権が最優先課題の1つに位置付ける「未来投資」の存在感に、陰りが出つつある。政府内では年末に向けたロシアへの経済協力に主眼が移りつつあり、優先順位が下がっているとの声が関係者から漏れる。

安倍政権は発足以来、政策を矢継ぎ早に打ち出すスピード感が市場の好感を呼んできたが、看板の掛け替えに終わるケースが多発するようなら、市場評価にも影響が出かねない。

<開催されない2回目の会合>

政府は今年6月にまとめた成長戦略で、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など第4次産業革命を推進する官民会議を設立することを決めた。   

ところが、会議に招く有識者の選定過程で「候補者の多くが既存の会議と重複した」(政府関係者)ことから、産業競争力会議を廃止する一方で「未来投資会議」を新たに設置。閣議決定した官民会議は、設立が見送られた経緯がある。

未来投資会議は9月12日の初会合以降、開催されていない。個別分野を集中的に審議する下部会合は断続的に行われているが、第4次産業革命を正面から取り上げる議論は乏しい。

未来投資が盛り上がりを欠く背景には、ロシア支援の存在感の高まりがある。政府は北方領土問題と並行して、対ロシア経済協力の具体策策定に注力している。

2016年度第3次補正予算の編成や衆院解散とも絡む可能性があり、政府・与党関係者からの注目度は高い。

一方で、自動車メーカーやIT企業は、第4次産業革命を見据えた研究開発投資をすでに始めている。この分野で具体的な対応を検討するには、相応の専門性と高い技術的知識が求められるが、ともに政府サイドよりは各企業の知見が勝り、政府から企業に具体的な追加対応を求めるには、様々な障害があるようだ。

<成長に不可欠な技術革新>

安倍政権はこれまで、「まち・ひと・しごと」や「地方創生」、「一億総活躍」や「働き方改革」などの看板政策を次々と打ち出してきた。

しかし、そのたびに新たな会議を設置し、大学教授や企業経営者を呼ぶ手法に新味はなく、「すでに勢いを失った政策も少なくない」との声が経済界からも出ている。

政府は2014年、IoT時代の到来を見据えて「ロボット革命実現会議」を設置し、昨年1月には2020年の「ロボット五輪」開催などを盛り込んだ新戦略を公表した。

同じ問題意識の下で新たに作られた未来投資会議に、「デジャブ(既視感)を感じる」と話す政府関係者もいる。

一方、民間エコノミストの中には、潜在成長率の引き上げを果たさなければ、国内総生産(GDP)600兆円を2020年ごろまでに達成するのは困難との声が広がっている。

未来投資会議の議論が空回りし、AIやIoT、ビッグデータなどで具体的な進展が見られなければ「日本経済の拡大は見込めない」(民間エコノミストのひとり)と懸念する見方もある。

 「看板倒れ」になるのか、実効性を示せるのか──。アベノミクスの成果を左右する大きな分かれ道になりそうだ。

*見出しを修正しました。

(梅川崇 編集:田巻一彦)

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