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アングル:安値でTOB、さが美経営陣が直面する説明責任

2016年10月31日

[東京 31日 ロイター] - さが美<8201.T>をめぐるTOB(株式公開買付)が10月中旬に決着した。筆頭株主で親会社のユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)<8028.T>は、高いTOB価格を提示していた再生ファンドの提案を退け、当初予定通りの投資ファンドへの売却を決め、安値TOBが成立した。対象会社のさが美は、一貫して安値TOBへの賛同を表明。コーポレートガバナンス・コード(CGC)の導入などで取締役会の機能強化が求められる中で、その責任を果たしたのかどうか疑問の声も出ている。

<安値TOB、以前に新日本無線のケースも>

さが美の筆頭株主、ユニー・ファミリーマートHDは10月11日、保有する同社株式53.8%を投資ファンドのアスパラントグループに売却すると発表した。これにより、対抗提案が出ていたにもかかわらず、安値を提案したファンドが勝利する異例のTOBとなった。

アスパラントの買付価格は1株56円だったが、再生ファンドのニューホライズンキャピタルの買付価格は1株90円。ニューホライズンはさが美とユニー・ファミマHDから賛同表明を得るために交渉を申し入れたが、ニューホライズンの安東泰志社長は「全く応じようとしないままだった」と語る。

TOBの対象会社はTOBについて意見表明を行うの常だが、さが美はアスパラントの提案に賛同を表明。同社の広報担当者は「ユニーが親会社なので、我々が独自に対応を言う立場にない。あくまで受け身」と説明する。

安東社長は「(さが美とユニー・ファミマHDは)東証のコーポレートガバナンス・コードに違反していることは明らかだ」と話す。

CGCでは「上場会社は自社の株式が公開買付けに付された場合には、取締役会としての考え方(対抗提案があればその内容を含む)を明確に説明すべき」と明記されている。

<日本にはないレブロン規制>

対抗提案が出ているにもかかわらず、安いTOB価格に軍配が上がるケースはこれが初めてではない。

2005年、日清紡<3105.T>による新日本無線<6911.T>に対するTOBに対して、村上世彰氏率いるファンドが対抗TOBを仕掛けた。日清紡のTOB価格840円に対して、村上ファンドは900円だったが、新日本無線<6751.T>は日清紡のTOBへ賛同を表明。新日本の株式の過半を保有していた親会社の日本無線は、日清紡への売却を決めた。

日本企業が高い価格提案している企業に、売り先を決められない理由の1つとして挙げられるのが、米国でM&Aの際に課せられるレブロン基準が存在していない点だ。レブロン基準は、企業の取締役会が会社を売却する際に、より高く買ってくれる先を取締役会が責任を持って探さなければならいとするルールだ。

さが美のケースを当てはめれば、同社の取締役会はニューホライズンの申し入れを検討しなければならなくなる。「米国だったら間違いなく問題となるだろう」と、M&Aに詳しい複数の法曹関係者は話す。

ただ、企業買収を決定づける要素は、価格だけではないとの考え方もある。新日本無線のケースでは、新日本無線は日清紡とのシナジー効果や、株式売却後も日本無線と新日本無線が日清紡を通じて取引を維持する効果などを説明し、安値TOBの正当性を説明した。

<日本サード、大株主がTOB期間中に高値で売却>

足元の株式市場で、異例の取引だとささやかれているのが、日本サード・パーティ <2488.T>のTOBだ。9月28日、夢真ホールディングス <2362.T>が1株610円で同社株をTOBすると発表。期限は11月11日までだが、その最中に創業家一族の大株主が30.54%を大阪の非上場会社に相対で売却していたことが大量保有報告書で明らかになった。同報告書によると、売却価格は1株850円で、夢真のTOB価格を40%近く上回る計算となる。

日本サード株式は、TOB期間中に一物二価の状況となっていたことになる。しかし、同社は現時点で何らのコメントも出してない。同社の広報担当者は「何か見解を出すべきだと考えているが、なぜこのような高い価格で相対取引が成立したのか、状況がつかめていない」と説明する。

取締役会がどのようにその機能を果たしているのか。コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードが導入され、市場の視線は厳しさを増している。日本や欧米のM&A事業に詳しい東京大学社会科学研究所の田中亘教授(会社法)は、「売却後の経営を考えた場合、高く売ることが必ずしも正しいとは限らない。しかし、対抗的な提案が出てきた場合、株価をそこまで引き上げるように掛け合うことはできるはずだ」と話し、さが美の場合は「そういう努力をどこまでやったのか疑問だ」と指摘している。

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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