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先代と違うフランシスコ法王の改革マネジメント

ロイター
2016年11月1日
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10月26日、ローマ法王フランシスコの姿を今月テレビで観ていたアルバニア出身のエルネスト・シモーニ神父(88)は驚いた。何と法王が自分の名を口にしたのだ。写真はバチカンで人々に語りかけるフランシスコ法王(2016年 ロイター/Max Rossi)

[バチカン市 26日 ロイター] - ローマ法王フランシスコの姿を今月テレビで観ていたアルバニア出身のエルネスト・シモーニ神父(88)は驚いた。何と法王が自分の名を口にしたのだ。

 ローマカトリックの実直な聖職者、白髪のシモーニ神父は、アルバニアで共産党独裁が続くあいだ、多年にわたって投獄されていた。そのシモーニ神父の枢機卿就任を、法王が発表していた。

 シモーニ神父だけでなく、法王が同時に発表した他の16人の新枢機卿にとっても、自分がこの誉れ高い地位に昇格することを聞いたのは、これが初めてだった。

 「自分の目も耳も信じられなかった」と、シモーニ神父はアルバニアでロイターに語った。「法王が口にされても、信じられなかった。『別のエルネストのことを言っているのかな』と独り言をつぶやいてしまった」

 だが、もっと重要なことがある。10月9日に数千人もの巡礼者の前でこの決定を発表するまで、法王はその秘密をバチカン聖職者の序列組織全体から隠しおおせたという点だ。

 このエピソードは、フランシスコ法王が2013年に就任して以来、独自のマネジメントスタイルを発揮して、カトリック教会改革を進めていることを物語っている。進歩的なアジェンダを推進しようとするとき、保守的な抵抗を退け、教会がこれを歓迎するよう、法王は注意深く、自分のカードを伏せている。

 10数人の現旧バチカン当局者や側近へのインタビューを通じて、12月に80歳を迎えるイエズス会士であるフランシスコ法王が、自分と外界を隔てる障害を回避しようとする姿が浮かび上がってくる。彼は自分の黒いブリーフケースを持ち歩き、自分の意志で課題を設定し、電話も自分で直接かけることが多い。

 対照的に、先代のベネディクト16世、先々代のヨハネ・パウロ2世は、「法王庁」と呼ばれるバチカン官僚組織と緊密な連携を保っていた。

 フランシスコ法王のアプローチの背景には、2013年に彼を選出した世界中の枢機卿から委ねられた法王庁の刷新という任務がある。

 過去数十年にわたり、バチカン市の行政機構には、カトリック教会のなかでも最も正統的な聖職者たちが集まってきていた。その理由の一端には、非常に保守的だった2人の前任者が自らの周囲に集めた副官たちの存在がある。

 結果的にフランシスコ法王は、12億人の信者を抱えるカトリック教会がこれまで疎外感を味わってきた同性愛者や離婚経験者といった人々を受け入れるには、法王庁への根回し抜きで何らかの決定を下すことも含め、ローマ法王庁の力を削いでいくしかない、と信じている。

 このアプローチによって法王は、保守的な司教たちの同意を得ずに、カトリック教徒が婚姻無効の宣告を受ける手続を簡易化するなど、いくつかの勝利を収めた。

 なかには失敗もあった。財政問題の解決に向けて1人の枢機卿にあまりにも大きな権限を与えたため、後にその行き過ぎを抑えざるをえなくなったことはその1例である。

 法王庁内部からは、現法王の決定は拙速に過ぎるという批判もあり、また透明性の向上を求める声もある。

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