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アングル:新プリウスに賭けるトヨタ電動化戦略

2016年11月1日

[東京 1日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>がリチウムイオン電池への慎重姿勢を転換、駆動用バッテリーへの本格採用に動き出している。今冬発売するプラグインハイブリッド車(PHV)の新型プリウスは従来より容量を倍増させた同電池を搭載する。

ハイブリッド車(HV)で世界の注目を集めたトヨタが、激化するエコカー市場での覇権を握れるか。新型プリウスPHVは同社の技術力を問う新たな試金石となる。

<量販車への搭載>

トヨタは2009年からリチウムイオン電池をプリウスPHVのリース車で使い始めたが、安全性やコストなどへの懸念から量販車への採用には慎重だった。HVでは1997年の初代プリウス発売時からニッケル水素電池を採用。現在は仕様によってリチウムイオン電池を搭載するが、ニッケル水素電池も一部で使い続けている。

リチウムイオン電池には軽量・小型で大容量というメリットがある一方、エネルギー密度が高く、使われている材料の発火性や過充電による発火などの危険がある。実際、13年には最新鋭旅客機ボーイング<BA.N>787のバッテリー発火事故や、三菱自動車<7211.T>のPHVの電池の一部が熱で溶ける事例もあった。最近もサムスン電子<005930.KS>の最新スマートフォンで発火事故が起き、リコール(回収・無償修理)だけでは収まらず、生産・販売打ち切りに追い込まれた。  

ただ自動車業界では、08年にテスラモーターズ<TSLA.O>が大容量リチウムイオン電池を積んだ電気自動車(EV)の「ロードスター」を、10年には日産自動車<7201.T>がエコカーの本命とするEV「リーフ」を市販化している。世界各地で厳しくなる環境規制はHVでは対応できず、自動車メーカーに家庭で充電できるPHVやEVなどへの転換を迫っている。現在の電池技術ではPHV、EVにはリチウムイオン電池の使用は避けれない。

トヨタが今秋冬に国内外で発売するプリウスPHVは、水素で走る燃料電池車(FCV)とともに環境規制対応に同社が示した一つの答えだ。新型プリウスPHVでは搭載したリチウムイオン電池の総電力量を初代の2倍の8.8kWhに増強、EVモードでの走行距離を初代の26.4kmから60km以上に伸ばした。  プリウスPHV開発責任者の豊島浩二氏によると、トヨタはPHVを「HVに代わる次世代環境車の柱」と位置付けている。初代プリウスPHVは発売から5年間の累計販売台数が約7万5500台にとどまっているが、2代目は次の全面改良までに「世界で累計100万台規模」を目指す量販車に育てたい方針だ。

<「安全、安全、安全」>

リチウムイオン電池を使うにあたり、豊島氏は「車を10年、何十万キロと乗る中で信頼性や安全性を担保するためには、よほどいろいろなフェイルセーフ(安全装置)を2重、3重にかけないといけない」と話し、「安全、安全、安全」を重視して作り込んでいると強調する。

プリウスPHVの電池システムを手掛けた同社のエンジニア、武内博明氏によると、同車のシステムでは、新型の電池セル95個一つずつの状態を常に監視し続け、セルレベルでショートの前兆が少しでも起きれば、それをキャッチする。「セルの中で異常が起こっていないかをみて、何か起こったら全体のシステムを止める」。豊島氏の言葉を借りれば、「箱入り娘」のように電池のセル1個ずつを制御管理するという。

安全性確保には電池の製造工程管理も重要で、トヨタはサプライヤーのパナソニック<6752.T>と緊密に連携している。製造過程でセルに微細な金属粒子や不純物が混じると化学反応が起き、熱暴走などにつながるショートを起こす恐れがあるからだ。工場は「半導体レベルで異物に気を付けながらやっている。(半導体の)クリーンルームに近い」(武内氏)。

新型プリウスPHVの電池は、安全性を確保した上で充放電時に陽極と陰極との間をイオンが移動する距離を近づけてセルのサイズを小さくした。こうしたことにより、セル数を従来から38個増やし、総電力量の倍増を可能にした。一方で、重さは50%増、体積は67%増にとどめた。

また、電池の専門家によると、量産効果により電池セル1KWh当たりのコストは145ドルで、過去5年間で60%下がっているという。トヨタはコストに関する明言は避けたが、豊島氏は電池価格の低下が電池の小型・効率化を可能にし、より洗練された制御技術の実現につながっていると説明する。

<あらゆる電動化車両に対応>

トヨタのリチウムイオン電池の開発年数はニッケル水素電池に比べ、まだ短いが、同社のエンジニアらは試行錯誤を繰り返して電池システムを改善させてきたと強調する。同社にとっての究極のエコカーはFCVだが、HV・PHV両方のリチウムイオン電池技術を磨くことで「将来的にはEVも作れる」(豊島氏)とし、あらゆる電動化車両に適した電池を持つことにつながるとしている。

(田実直美、白水徳彦、白木真紀 編集:北松克朗)

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