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焦点:フェイスブック検閲が招いた「裸の少女」写真騒動の裏側

2016年11月2日

[サンフランシスコ/ワシントン 28日 ロイター] - インターネット交流サイト(SNS)大手の米フェイスブックが先月、ベトナム戦争の象徴的な写真を削除して世界的な騒動を巻き起こしたことを受け、同社幹部はすぐさまそれを撤回し、掲載を認めた。

だが元フェイスブック社員2人がロイターに語ったところによると、ナパーム弾でやけどを負った裸のベトナム人少女の写真は、かつて同社の社内研修で削除されるべき投稿の一例として使われていた。

研修担当者はこの写真について、歴史的意義はあるものの、苦しんでいる裸の子どもが写っており、同意なしで撮影されたものであるため、フェイスブックの規約に違反すると、コンテンツを監視する社員に話したという。

フェイスブックは、最小限の自由裁量で一様に適用できるルール作りに苦心している。しかし戦争写真の削除撤回は、同社幹部トップが時に会社の規約や、数多いコンテンツ監視担当者の意向を、いかに覆すかを露呈している。

フェイスブックはメディア企業ではなく、テクノロジー企業だとよく主張するが、少なくとも幹部5人が定期的にコンテンツ規約に関する指示を出し、とりわけ注目されそうな論争においては編集的な判断を下していると、同社の現旧幹部8人がロイターに明らかにした。

そのような主な意思決定者の1人で、コミュニティーオペレーション部門の責任者であるジャスティン・オソフスキー氏はフェイスブック上で、戦争写真の削除は「誤り」だったと認める投稿を行った。

 「『戦争の恐怖』を伝えるような写真の世界的・歴史的意義は時にヌードをフェイスブック上から排除する重要性に勝ることがある」と同氏は述べている。

フェイスブックの広報担当者であるクリスティン・チェン氏は、研修で前述の写真を使用したことについてコメントを差し控えた。

投稿の検閲に関する規約や慣習の詳細を公表するよう求める声に同社は長い間応じていない。このような姿勢は、投稿を削除されたユーザーや、透明性の欠如などを指摘する言論の自由を擁護する人々から批判を招いている。

その一方で、一部の国や反テロ団体からは、攻撃的で危険だとみなされる投稿をもっと削除するよう圧力を受けている。

<上層部が検討>

フェイスブックの現旧幹部はロイターに対し、苦情が同社のコンテンツ規約を決定する部門までいかにたどり着くのかを、大半が匿名を条件に詳細に語った。最も難しいものは幹部トップにまで上げられるという。

もう1人の主要な意思決定者であるグローバル・ポリシー・チーフのモニカ・ビッカート氏は、戦争写真をめぐる騒動での決断に関与した。

 「厳正に調査した結果、(写真は)フェイスブック上に確かに属するものと判断した」と元連邦検事のビッカート氏は述べているが、意思決定プロセスの詳細については明らかにしなかった。

フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、同社がノルウェー国内のユーザーアカウントから戦争写真を削除した後、自身のアカウントにこの写真を投稿した同国のソルベルグ首相に陳謝した。

サンドバーグ氏、オソフスキー氏、ビッカート氏に加え、慎重さを要するコンテンツの問題に関わる幹部には、政府関連の責任者を務めるジョエル・カプラン氏、パブリックポリシーと通信担当の副社長であるエリオット・シュラージ氏がいる。

これら5人は皆、ハーバード大学で学び、学士号あるいは大学院の学位を持ち、サンドバーグ氏以外は法律の学位を取得している。

ビッカート氏によると、同大学を中退しているマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)もコンテンツ問題に関与することがあるという。

こうした幹部らはまた、世界中の社会的状況や政治的配慮の変化を反映したコンテンツ規約の変更にも関わっていると、フェイスブックの現・元幹部は口をそろえる。

5人の他にもコンテンツ規約の意思決定に関わる上層部はいるというが、前述の広報担当者であるチェン氏はその名前を明らかにはしなかった。

<表現の自由をめぐる闘い>

フェイスブックが検閲に関する決定について口が重いことは、世界中の多くの国で批判されている。

同社は先月、パレスチナで最も広く読まれているオンラインメディアのうち、2社のエディターのアカウントを無効にした。フェイスブックの一般的な慣習に倣い、同社は無効にした理由やどのコンテンツが不適切とみなされたのかについて説明しなかった。

フェイスブックはロイターに対し、無効は単なるミスだったと語った。

一部のパレスチナの擁護団体やメディアは、アカウント無効はイスラエル政府とフェイスブックの不適切な同盟関係に起因する検閲だとして非難した。

イスラエル政府の閣僚の1人、ギラド・エルダン警察相の報道官は、ユダヤ人に対する暴力を扇動しているとする何百にも及ぶフェイスブックのページを遮断するよう、政府は同社に求めていると明らかにした。

アカウントを無効にされたメディアの1つの管理者は、コンテンツ規約を担当するフェイスブックの中東責任者が、無効をめぐる騒動が起きた後に連絡してきて、無効にされた4つのアカウントのうち3つは回復したと語った。

フェイスブックは、アカウント回復は苦情を受けてのものではないと説明。幹部トップの関与についてはコメントしなかった。

コンテンツが削除された最近の他のケースにおいては、同社は技術的な不具合だったとし、その後復旧されている。そのなかには、米ミネソタ州で起きた、警察官が黒人男性を射殺した直後の様子を映したライブ動画も含まれている。

広報のチェン氏は「不具合」について説明するのを差し控えた。

同氏によれば、世間の反応に応え、苦情検討プロセスを再検討しているという。フェイスブックは現在、個人や団体のプロフィール全体に関わる企業活動、あるいはそのようなプロフィールのページ全てに対する訴えは受け付けているが、個々の投稿についてはこの限りではない。

<分厚いルールブック>

1日当たり100万件以上に及ぶコンテンツに関する大量の苦情に対処するため、フェイスブックは多層的なシステムを採用している。現旧幹部によると、苦情はアイルランドのダブリン、インドのハイデラバード、米テキサス州オースティンと同カリフォルニア州メンローパークにいるコンテンツ規約を扱うチームに自動的に送られ、そこで初期の決断が下される。

下位の社員や請負業者は、フェイスブックのユーザーが従うことを求められる比較的隙のある「コミュニティースタンダード」を解釈する分厚いルールブックを参照している。同社はルールに従い、できるだけ自由裁量を使わないよう、現場でコンテンツを監視する人をトレーニングしている。

削除がさらなる苦情を呼んだ場合、地域のマネジャーが中位の決定機関として機能する。それでも騒動が続くときは、米国にいる幹部トップに問題を上げるという。

上級幹部はまた、規約の更新にも関与している。例を挙げると、オソフスキー氏とカプラン氏は先週、コンテンツ削除に対する「反響の継続」を受け、フェイスブックが削除を決めるうえでニュースの価値を一段と重視すると投稿した。

これより以前、ベトナム人少女の写真をめぐる騒動を受けたオソフスキー氏は、同社の規約について、通常はうまく機能しているが、いつもそうであるわけではないとの見方を示していた。

ベトナム戦争時に撮影された少女の写真は、現場の監視担当者によってノルウェーのアカウントから削除された初めてのケースだった。

それに抗議するため、ノルウェー紙アフテンポステンは同写真を1面と、それを削除したフェイスブックに掲載。続いて同国のソルベルグ首相も自身のアカウントに掲載したが、それもフェイスブックによって削除される結果となった。

同社はその後、「あるケースで裸の子どもが写った写真を許可し、他のケースでは許可しないとの線引きは困難」だとする声明を発表した。

だがその翌日、幹部トップはそうした判断を覆し、サンドバーグCOOはソルベルグ首相にこう語った。

 「明確な基準があっても、毎週ケースバイケースで数百万件の投稿を監視するのは、大変な仕事だがやりがいがある」

(Kristina Cooke記者、Dan Levine記者、Dustin Volz記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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