朴大統領の正念場は退任後
権力集中であるがゆえの不正疑惑

韓国大統領と東京都知事、不正を生みやすい権力構造の類似韓国の朴政権がスキャンダルで揺れている。大統領に権力が集中する韓国の政治構造は不正の温床となりやすく、これは日本の東京都知事にも似ている
Photo:YONHAP NEWS/AFLO

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権がスキャンダルで揺れている。実業家で親友の崔順実(チェ・スンシル)氏に政府の機密情報を渡し、アドバイスを受けていたという問題だ。

 騒動が持ち上がって2ヵ月、崔順実氏は先日自ら検察に出頭し、マスコミのカメラの前で国民に対して非を認めて許しを請うた。崔氏に対してはこの後、逮捕状が請求された。

 朴政権のスキャンダルについては、韓国の大統領制度の特徴を考えると、理解が早く進む。最大の特徴は、巨大な権力が大統領に集中していることだ。

 アメリカの大統領の場合、行政の長であり同時に陸海空軍の長でもあるという立場で強力な権力を持つが、韓国の大統領はそれに加えて議院内閣制の要素があるために、議会に対しても法案提出など強い権限を持つ。また在任中は、不逮捕特権がある上に検察も権力の顔色をうかがうため、在任中は絶対的な権力者になる。その強大な権力を制御するために、韓国大統領の任期は5年に限られ、再選は禁止されている。

 さて、このような権力集中システムであるがゆえに、歴代の韓国大統領およびその側近、親族、親友には不正疑惑がついてまわる。ただ報道を見た限りでは、今回は不正といっても検察は本丸に、つまり大統領が実際に何らかの便宜を図ったり、それで金が動いたりという証拠にまでは到達できないと見られる。むしろ朴大統領に関して言えば、本当の地獄が始まるのは退任して以降のことだろう。

 韓国の歴代大統領は在任期間中は権力がその立場を守ってくれているが、退任後は例外なく本人ないしは親族が収賄容疑で逮捕されている。再任されず政治の世界に戻って来られないシステムであるがゆえに、検察がもう顔色をうかがわなくなるからだ。金泳三から李明博までの過去4代の大統領は、それぞれ数十億ウォンといういかにも権力者にふさわしい額の収賄疑惑で、家族や親族が逮捕されている。

 刑が重いという意味では、その前の盧泰愚が不正蓄財により懲役22年(1997年に特赦)、さらにその前の全斗煥が不正蓄財と光州事件により、死刑判決を出されている(高裁で無期懲役に減刑の後、やはり特赦)。権力者の犯罪が退任直後にここまで暴かれる国も珍しい。