ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

焦点:クリントン氏優勢シナリオ不変、選挙後は限定的リスクオンか

2016年11月2日

[東京 2日 ロイター] - 米大統領選で共和党トランプ候補の猛追に荒れ模様の金融市場だが、多くの参加者は依然、民主党クリントン候補の勝利を前提とした投資戦略を崩していない。

ただ、その基本シナリオ通りに展開したとしても、トランプ氏が残した爪痕は深く残り、市場を覆う不安心理の解消にはほど遠い。しばらく中途半端なリスクオンムードの広がりを想定する声が上がっている。

<投票直前にまた波乱、基本シナリオまだ不変>

クリントン氏の勝利は盤石ではなかったのか──。同氏のメール問題再燃を背景に、一部世論調査で再びトランプ氏が優位に転じたことで、市場では株式やドルが売られるなど、参加者は今週に入り「トランプリスク」再燃への対応に追われた。

一方で依然として多くの調査はクリントン氏の優勢を示しており、日本の識者の間でも「影響はあったがクリントン氏の勝利はかなり固い」(元外務事務次官の野上義二・日本国際問題研究所理事長)との読みが一般的だ。

 「調査は(最近の株/ドル高などで生じた)利益確定を促す材料になった。結果は当日までわからないが、基本シナリオを抜本的に変更するほどの出来事ではないだろう」(ヘッジファンド関係者)という。

その基本シナリオとは、大統領選がクリントン氏の勝利で大過なく終われば、意外に堅調な新興国をけん引役としたリスクオンムードが、来年に向けて次第に顕在化していくというものだ。

<穏健シナリオと勝ち過ぎシナリオ>

現時点で、市場が最も穏健な結果と受け取る可能性が高いのは、大統領選でクリントン氏が勝利し、議会選では下院を共和党が押さえるケース。過激な言動を続けるトランプ氏がもたらす混乱は回避することができ、時に人気取り優先と言われるクリントン氏が政策を自在に暴走させるおそれも小さい。政策の極端な変更は難しくなり、結果的に現行の現実路線から大きくかい離しない公算が高まる。

しかし、この構図にも波乱の火種はいくつもある。議会で政策の大半が否決される米国版「決められない政治」が復活すれば、来年3月には債務上限問題が再び世界の市場を揺るがすのは必至。焦って議会承認を必要としない行政措置などを乱発すれば、議会の反発は不可避となり、新大統領の求心力は発足直後から低下の一途をたどりかねない。

しかも、クリントン氏の持論である金融やエネルギー、ヘルスケアといった業界の規制強化策が含まれ、「企業活動を束縛することになれば、リスク資産や経済見通しの逆風になる可能性が高い」(日興アセットマネジメント・チーフストラテジストの神山直樹氏)という。

上下両院の過半数を民主党が獲るケースはどうか。共和党は主流派にティーパーティー(茶会)、トランプ派まで加わった大混乱に陥る可能性もあり、民主党はオバマ政権初期の医療保険制度改革(オバマケア)のような重要法案に着手しやすい。

政治空転リスクが後退するため安定的な船出にも見えるが、保護主義的な政策を好む民主党の「一強体制」は政策の急速な左傾化につながりやすいとの予想が市場では一般的で、株価など資産価格への影響を懸念する声も少なくない。

<円安は長続きせず>

投票直前に最も激しい神経戦を繰り広げている為替市場。クリントン氏が勝利しても、実際の議会勢力図や閣僚人事、公約の実現が極めて難しい政治環境などを考慮すると、その後しばらくドル高や円安地合いが続くほど事態は明快ではない。

政治の「意思」を最も反映するとされる通貨ですら、大統領選のみで決め打ちするのが難しいことはよく知られている。1993年発足のクリントン政権下では、任期中にドルが95年の79円から98年の147円まで上下68円の乱高下を記録した。

<ブレグジット超える混乱も、米格下げや金利暴騰>

トランプ氏勝利の場合、混乱は一段と深刻になる。英国の欧州連合(EU)離脱時と同様、もしくはそれ以上の衝撃になるとの懸念もあり、多くは株が売られ円が急騰するようなリスク回避の動きがパニック的に発生する展開を想定する声が多い。

中でも深刻となりそうなのが米国債。クリントン氏の「2倍」の巨額インフラ投資、財源不明の大規模減税などは、国債が再びトリプルAを失う可能性を市場に想起させる。実際、国内のある大手機関投資家は選挙後の米金利急騰を想定した保有資産のストレステストを実施。水面下で「危機に備えている」(幹部)という。

予想外の結果で生じる激震は大きなものとなりそうだ。

(基太村真司 編集:橋本浩)

スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


ロイター発 新着ニュース

ロイター提供、日本と世界の最新ニュースをお届けします。

「ロイター発 新着ニュース」

⇒バックナンバー一覧