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サムスンへLSI生産委託の東芝
課題はマーケティング力強化

週刊ダイヤモンド編集部
2011年1月7日
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東芝が売却する製造設備がある長崎工場の全景。事業構造改革にメドはついたが課題も残されている

 セルは誤算だった──。東芝が長崎県にあるシステムLSIの製造設備をソニーへ売却することを受け、東芝幹部は思わずこう漏らした。

 東芝は長崎で、「セル」をはじめとしたゲーム機器やデジタル家電に組み込まれるシステムLSIを生産していた。そのシステムLSI事業は2010年5月に発表した中期経営計画でも収益力強化が課題として挙げられた事業だった。今回、その課題事業に大ナタを振るった。

 製造設備をソニーへ売却してセルの生産から撤退し、今後、最先端のシステムLSIは生産を韓国サムスン電子などに委託し、東芝は開発に注力する。

 セルとはソニーと米IBM、東芝が共同開発した高性能半導体。08年3月、東芝は長崎県の製造設備をソニーから900億円で買収し、セルの量産を開始した。セルは一般的なパソコンと比較して10倍以上の演算速度があるほど高性能で、プレイステーション3(PS3)を手始めに、多くのデジタル家電やさまざまな電子機器に導入されると踏んでいた。

 しかし、セルはPS3や東芝の最高級液晶テレビ「セルレグザ」、ソニー製の放送用機器以外に目立った搭載実績は上げられなかった。加えて、ソニーから製造設備買収後間もなくリーマンショックによる景気減速で半導体の需要が急減。セルに限らずシステムLSI事業は08年度と09年度は通期で赤字で、10年度も通期での赤字が確実な状況だ。

 そのなかでソニーへ再び製造設備を売り戻すという今回の決定は、「賢明な判断」(松橋郁夫・ゴールドマン・サックス証券投資調査部ヴァイス・プレジデント)だ。「生産委託をすることで、稼働率の変動から赤字を出すようなリスクから解放される」(同)。

 一方、自前でのシステムLSIの生産をやめ、開発に特化するに当たり、東芝は複数の委託生産先を開拓する方針だが、いち早く話がまとまったのがサムスン電子だった。サムスン電子にとっては、受託生産ビジネスを強化する方針であり、願ってもない話である。サムスン電子は韓国内の器興(チフン)にある製造設備を使って、回路線幅40ナノメートル以降の最先端の半導体を11年6月までに量産する計画だ。さらに東芝は今後、大手半導体受託メーカーである米グローバルファウンドリーズなどにも生産を委託すると見られる。

 システムLSI事業の構造改革にメドをつけた東芝だが、安定的に収益を上げていくには「マーケティング力の向上が課題」(南川明・アイサプライ・ジャパン副社長主席アナリスト)と指摘されている。他社を圧倒する技術力を背景にセルを生み出したが、搭載が進まず誤算に終わったのも、突き詰めればマーケティング力の弱さに行き着く。その意味で、改革はまだ緒に就いたばかりといえる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

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