本欄でも何度か触れた個人投資家で著名ブロガーである水瀬ケンイチ氏と共著で書いた本が先日発売された。タイトルは『ほったらかし投資術』(朝日新書)だが、運用は、どの程度「ほったらかし」でいいものなのか。

 インデックスファンドで積み立て投資をされている水瀬氏(会社員で愛妻家)は、1年に1度、ポートフォリオのバランス調整(俗に「リバランス」)をされるようだ。複数の資産に投資して時間がたつと、相対的に値上がりした資産のウエートが大きく、値下がりした資産のウエートが小さくなるので、主にこれを修正する。

 もともとの投資ウエートを回復する意味でのリバランスを行ったほうがいいか、また、行うとしてどの程度の間隔で行うかについてはしばしば議論になるが、この議論はあまり意味がない。

 投資のテキストには、ポートフォリオ構築のプロセスは書いてあっても、メンテナンスの方法が書いてあることは珍しい。理屈のうえでは、リバランスを行うか否かは、投資環境の変化のスピードと、ポートフォリオの現状(の適合具合)、そしてポートフォリオの調整コストの三つによって決まる。

 もともとの運用計画を作るときには投資環境に関して判断をしたのだから、調整コストを考慮したうえで、これと同様の判断を続けて、必要ありと判断したときにのみリバランスを行えばいいということだ。状況が大きく変わればリバランスすればいいし、変わらなければコストをかけてポートフォリオを動かす必要はない。