アラブ 2016年11月8日

教えて! 尚子先生
中東のイスラム教徒は、日本や日本人のことをどう思っているのですか?【中東・イスラム初級講座・第36回】

日本人にはなかなか理解しにくい中東のイスラム教徒たち。では逆に、彼らは日本や日本人のことをどの程度知り、どう思っているのでしょうか。ヨルダンに住んだ経験があり、日本では珍しい女性の中東研究家として活躍する岩永尚子先生がわかりやすく解説します。

 「中東のイスラム教徒は、日本や日本人のことをどう思っているのか?」--この質問への回答は、教えて!尚子先生 第18回「イスラエルとその周辺国との関係はどうなっていますか?」で説明した、イギリスBBC放送局の調査から垣間見ることができるでしょう。

 この調査は日本だけを対象としたものではありません。世界25カ国の約1000名ずつの対象者が、世界の主要国の影響をどのように考えているのかという調査で、2005年(日本が調査対象となったのは06年)から14年まで続いていました(16年には質問内容が変更されたようです)。

 つまり、約10年間の変化をも分析することができるのですが、先進国では毎年調査が行なわれていたものの、途上国については選ばれる国々が一定ではなく、とくに中東ではほぼ毎年選ばれている国はトルコだけ(そのトルコでも1年だけ調査が行なわれていない年がある)となっています。

 そのため、時間の経過にそった変化を分析することはできませんが、各国の人々の日本に対する感情を分析する手助けにはなると思います。

日本の世界への影響はプラス? マイナス?

 まず調査国全体の結果としては、2007年から13年までの間、「日本が世界に与える影響はプラス(原文はpositive)である」と回答した人の割合の平均値は、ほぼ50%台半ばを推移していました(翌14年は48%に減少)。一方、「マイナス(原文はnegative)の影響を与えている」と回答した人は、おおよそ20%程度(例外は13年の26%、14年は29%)でした。

 この数値だけでは良いのか悪いのかよくわかりませんが、日本はプラスの影響を与えている国の上位5カ国の中にほぼ毎年入っており、おおむね評判は良いと考えられます。ちなみに、ほぼ毎回1位を獲得しているのがドイツで、プラスの影響を与えていると答えた人が60%、マイナスと答えた人が15~18%となっていました。

 ドイツをおさえて日本が1位を獲得した年は2012年のみで、つまり東日本大震災の際に冷静に振る舞った日本人の姿が世界中に放映されたためではないかと思われます。

 つぎに、イスラム圏での調査についてですが、比較的調査回数が多いのがトルコとエジプトでした。けれども、この2カ国の調査結果には極端なばらつきがあります。

 トルコでは日本の影響を「プラス」と回答したのが最も多い年は2011年の64%(同年のマイナスは21%)ですが、最も低いのは09年の30%(マイナス47%)でした。エジプトでは「プラス」が多いのが12年の57%(マイナス15%)、プラスが極端に低いのが07年の33%(マイナス16%)でした。

 なぜこのように調査年によって結果に差異が生じているのかを分析する手掛かりがないため、残念ながら原因はわかりません。

 他の国々では、レバノンがプラス58%マイナス19%(07年)、プラス66%マイナス15%(08年)、アラブ首長国連邦のプラス60%マイナス14%(08年)、イランのプラス57%マイナス33%(06年)、イラクのプラス54%マイナス14%(06年)、サウジアラビアのプラス42%マイナス5%(06年)という結果でした。どの国においても、全世界のプラスの平均値である50%台半ばとほぼ同じ、もしくは上回っていました。

 興味深いことは、例外もありますが、世界平均のマイナス20%をいずれもかなり下回っていることです。たとえばサウジアラビアのプラス42%、マイナス5%(06年)のように、プラスの値も低いのですが、マイナスの値が平均値よりもかなり低くなっています。この結果をみる限りでは、中東においては日本人の評判はおおむね良く、評判は悪くないといえるのでしょう。

 さらにつけ加えるとすれば、日本人が世界にマイナスの影響を与えていると考える人も少ないのですが、おそらく「よくわからない」を含む「良くも悪くもない」、つまりプラスともマイナスとも答えていない人の割合が、世界平均より高いということです。つまり、「評価できるほど知らない」もしくは「どちらともいえない」と考えている人がとても多いと考えられるのです。

 この結果は、私が中東の国々を訪ねた際に感じた印象と重なっています。最初にお断りしておきますが、私が訪問したことのあるイスラム教国は、トルコ、イラン、ヨルダン、シリア、パレスチナ(イスラエル)、アラブ首長国連邦、オマーン、マレーシアときわめて限られた地域だけで、私の感じた印象もきわめて限られたものだということです。

 それでも、おそらく日本人にとってはあまり行く機会の多い国々ではないため、印象を述べてみたいと思います。

父と子(トヨタピックアップトラック)/アンマン, ヨルダン【撮影/安田匡範】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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