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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

中国に幻滅した日米が関係修復と米主要紙 前原氏に期待も? 

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第32回】 2011年1月12日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週の米メディアはアリゾナ州の銃撃事件で大騒ぎなわけですが、こちらのコラムでは、米『ワシントン・ポスト』が「揺るぎない日米同盟」を「いい話だ」と評したことを取り上げます。そして、ワシントンが地元の同紙社説・論説からはワシントンの空気のようなものが透けてうかがえるだけに、同紙の社説を担当する論説委員長が前原誠司外相について「テレビ映りがよく、いずれ日本の首相になるかもしれない」と書いたことは、覚えておいてもいいかと思います。(gooニュース 加藤祐子)

ワシントン・ポストが日本を推薦

 東京支局長の経験もある『ワシントン・ポスト』のフレッド・ハイアット論説委員長が前原外相の訪米を機に、日米関係がここ2年間でどう変化してきたかを書いています。同紙は民主党政権が発足した当初から鳩山氏辞任に至るまでずっと厳しい論調だっただけに、今の日本と前原氏に対する書き方が興味深いです。

 ハイアット氏は10日付で「日本との同盟関係を修復する(Patching up our alliance with Japan)」という見出しの記事を掲載しました(ちなみにこの見出しはネット上では、このコラムの掲載直前まで「日本が提供する安全保障(Japan's offer of security)」となっていました)。

 記事は、オバマ政権のアジア観が変化してきたことを解説しています。いわく、政権発足当初は、(1) 中国との関係は期待できる、(2) 朝鮮半島はなんとかしなくてはならない問題だ、(3) 日本は特に問題もないし、いて当然のものとしてあしらえばそれで済む(can take for granted)衰退する同盟国に過ぎない——と、考えていた。けれども政権発足から2年たって「オバマ氏にとってアジアにおける最良の親友はなんと、韓国なのだ。中国は期待外れだ。そして日本は、付け足し的な存在だったものが頭痛の種になったが、今ではまた役に立つ同盟国になれるかもしれないというところまできた」と。

 記事を要約すると、「左寄り」な鳩山氏の親中姿勢のせいで一旦「ぐらついた」日米関係の修復に何より役立ったのは、日米両国が同じように中国に幻滅したことだと。いわくオバマ政権は、中国との関わりを拡大し、国際社会の維持について中国にも大きな役割を与えれば中国の責任ある協力を促すことができるだろうと期待していた。中国が日本を追い越して世界第2位の経済大国となったのに伴い、「米中G2」への期待が、ワシントンと東京の長年の友情を隅に追いやってしまうかと思われていた。しかしアメリカがいくら中国に働きかけても、得る成果は少なかった。中国は対イラン政策ではいやいや協力してくれたが、北朝鮮、通貨と貿易、軍同士の交流、人権などをめぐってはアメリカは落胆させられるばかり。加えて中国は、南シナ海で横暴にふるまい、強圧的な重商主義を押し進め、当局公認の反日デモを繰り広げたことで、日本をはじめとするアジア各国の警戒を高めたのだと。

 記事は、「中国はあまりに強大で、あまりに不可欠な経済的パートナー」なだけに、クリントン国務長官も前原外相も、中国の「覇権主義」をあからさまに批判しないが、日米外相会談では「浮上しつつある戦略的な環境」に対応するため「防衛態勢は進化し続けなければならない」と合意したことに言及。

 よって「日米関係の調子が変化したことは間違いようがない。皮肉なことに、沖縄基地問題の解決ではなく、未解決のまま双方とも特に騒ぎ立てないことが、日米関係の変化を何よりはっきり示している。オバマはもはや最終通告もしないし、基地問題解決の期限を定めたりもしない。日本側では、在任1年足らずの気の毒な鳩山に替わった後任者が、ひとつの問題に同盟全体が縛られてはならないと強調する」とも(敬称略なのは原文ママです)。

 記事は、民主党政権は不安定だし、菅政権が1年以上続くのかも分からないし、日本が長期的にどこへ向かうのかも分からないと指摘した上で、「オバマ政権はこの2年間、中国やロシアといった独裁国家が、パートナーとしていかに予測しにくい相手なのかを見てきた。そして民主国家で同盟国の日本が今、前原が先週言ったように『揺るぎない日米同盟』をアジアの『平和と安定の礎石』として提供しているのだ。かなりいい話のように聞こえる」と、いわば「推薦」しています。「日本がこう言ってます。いい話だと思いますよ」と(「いい話だと思います」と訳した原文の最後のくだりは「sounds like a good deal」。「deal」は直訳すれば「取引」です)。

 アメリカと東アジアの関係性をワシントンが見定めるにあたっては、「親中派」と「親日派」の綱引きが伝統的に続いています。ここ数年は「親中派」の圧勝だったわけですが、今回のこの記事はいわばその揺り戻しです。そろそろどうですか、また日本と寄りを戻してみませんか? いったんは中国浮気をしかけてそっぽを向いた日本もほら、反省して、また尽くしてくれると言ってるわけですし、あなたも中国との浮気に懲りたでしょうから——と、こんな書き方をすると、夫婦喧嘩の仲裁をする人みたいで、かなり下世話な話ですが、政府にそうやって働きかけている記事にも思えます。

 そしてアメリカにとって信頼できる良いパートナーにまたなりますから、と日本を代弁しているのが、外務大臣たる前原氏なわけですが、『ワシントン・ポスト』のハイアット論説委員長はその前原氏について「テレビ映りがよく(telegenic)、人気のある政治家で、将来の総理大臣となり得る(a possible future prime minister)」と評しています。「9月に外務大臣として就任して以来、異例なほどの正直さで発言を重ねてきた」前原氏について、アメリカ政府当局者が何より注目するのは、「日米同盟を重視し、民主主義や自由貿易についてアメリカと価値観を共有していること」だと説明します。

私見ですが、「アメリカと価値観を共有」し「はっきり正直にものを言う」外国の政治家は、すなわち、アメリカ政界にとって「一緒に仕事しやすい相手」にほかなりません。『ワシントン・ポスト』の論説が前原氏をこう評したことは、面白いと思います。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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